鳥山孝之氏インタビュー記事



 大阪市とシカゴ市は、姉妹都市として、さまざまな面で協力関係にある。特に企業の誘致や観光については、両市とも力を入れており、今後も、そのコラボレーションが期待されているところである。近頃では、大阪市も参画しているBIO2006やROBOBussiness2006など、シカゴ市及び中西部で開かれる大きなイベントも多い。

 そんな中、2006年3月から、大阪市職員4万7千人の代表として、姉妹都市のシカゴ市にある大阪市シカゴ事務所へ赴任されている鳥山所長にお話を伺うことができた。


−シカゴへ赴任した経緯について
 
 2006年3月に、大阪市シカゴ事務所の所長として赴任しました。任期は、3年間の予定です。大阪市では、海外に5ヶ所の事務所を構えていますが、その駐在員募集は、現在、公募制です。応募した当時は、大阪と海外、特にアジアとの経済交流の仕事に携わっていました。異動時期に該当していたこともあり、上司の勧めがあり応募しました。ここ10年は、国際経済関連の仕事をしていたこともあり、海外事務所に一番近い仕事をしていたこともシカゴ事務所所長に任命された理由のひとつだと思います。


−シカゴのよいところについて

 赴任してからの3ヶ月間の印象ですが、人々がフレンドリーだと感じています。また、シカゴは、大都市でありながら、田舎の町のような暖かい雰囲気をもった都市という印象もあります。

 ビジネス環境、交通機関、娯楽施設など都市インフラの充実は言うまでもありませんが、私が住んでいる緑がすばらしい自然環境の郊外と職場のあるダウンタウンのコントラストもすばらしいと思っています。ここの緑いっぱいの環境は、大阪のダウンタウンに住んでいては、望むべくもない環境です。通勤には、片道1時間半程度かかりますが、その道程の、電車の時間は日本とは違いゆったりしているので、資料に目を通すなど有意義に過ごすことができます。

 シカゴの冬の寒さは厳しいと人から聞きますが、今は、一番良い季節の様子なので、シカゴの良さをこれからもどんどん発見していきたいと思います。


−今までに乗り越えた障壁について

 高校、大学、就職と特に回り道することなく現在に至っていると思っていますので、乗り越えるほどの障壁というとあまり思い浮かびませんが、仕事の上では、この23年間にさまざまな印象深い出来事がありました。

 例えば、20代に所属していた農林行政部門では、60年ぶりの西日本最大の市場である中央卸売市場全面建て替え工事を8年間担当しました。

 この事業は、1千億円以上かけて、13年間で建て替えを完了するというもので、収支計画や予算獲得などで夜遅くまで作業をしたり、泊り込みで作業をすることも珍しくありませんでした。

 当時は、パソコンも導入されておらず、電卓で30年後までシュミレーションをするのは、根気のいる作業であったので、今思うと、体力のある若い時だからできたと思っています。

 近頃の約10年間は、国際行政部門に配置されていました。日本最大の環境ビジネス展示場の開設や、10年前の当時、まだ大阪市では馴染みの薄かった外資系企業の誘致について、今までの業務とはまったく畑違いではありましたが、当時の感覚として大阪の企業への脅威として捉えていた財政部門の猛反対を受けながら関係機関の設立や助成制度の確立を行いました。外資系企業の誘致については、大阪市は、各市のうちで出遅れていた感がありましたが、フロントランナーになれば、クラスターがクラスターを呼ぶという業界の性格を知っていたので、とりあえず前に出るという姿勢で取り組みました。

 今となっては、大阪市のメインの政策のひとつとして取り扱われるようになっており、隔世の感があり、とても印象深い仕事となりました。30歳代後半で、まったく畑違いの職場に配置転換されたため、ゼロからの知識の習得が必要であり、また、英語については、大学卒業後10数年間まったく必要としていなかったため、その年代で勉強を始めたので、正直しんどい思いをしました。

 健康面では、特に大病は患っていませんが、印象深かったのは、20歳代のときの出来事です。山でトレッキング中に誤って、足を踏み外し、顔を20数針縫ったという経験があります。車で約2時間かけて地元の総合病院に搬送され、幸い当直の医師が腕の良い形成外科医で、後遺症もほとんどなく回復することができました。

 家庭面でも、特に大きな障壁はありませんでした。ただ、結婚の時期が遅かったため、38歳のときに生まれた双子の世話に日々苦労しています。


−仕事、人生で大切にしていることについて

 役所という仕事柄、もっとも大切なことは、信用だと思っています。役所は信用があり公正で、情報を隠す必要もなく、きちんと応えてくれる機関であると思います。

 皆様の税金を使って公共の利益を追求するので、何より、公平性、透明性を維持することにより、市民の皆様の信頼の確保が可能になると思っているからです。


 私自身、いろいろな方とお会いし、いろいろな仕事に携わってきましたが、大阪市の持つ信用に助けられた面も多々あると感じています。最近は、大阪市を中心に公務員の倫理観が問われる場面もありますが、一部の人の行為で全体が同じであると見られるのは、とても残念なことです。少なくとも、私の周りにいた人たちは、非常にまじめに、無報酬でも仕事をする人も多くいます。信頼性の回復は、重要であると思います。

 信頼性の回復には、真摯な姿勢で取り組むということが必要なことだと思います。人それぞれ、得手、不得手があり、能力に差があるのはやむを得ないと思いますが、真摯な態度で仕事に臨んだり、人に接したりすることにより、その気持ちは伝わると思います。手抜きはしたくないと常に思っています。

 管理職になってから、約10年が経ちますが、日々の仕事を進める上で心がけていることは、個々人の能力の発揮しやすい環境を形成するということです。できるだけ各自の得意分野に関する仕事を配給することができ、気持ちよく能力を最大限発揮できればよいと考えています。しかし、現在勤務しているシカゴ事務所は人数が少ない所帯なので、なかなか思うようにいかないのが現状の悩みでもあります。全員がオールラウンドプレーヤーとして業務をこなさなければいけないという現状ではありますが、家族より長い時間を一緒にすごす仲間として、気持ちよく仕事ができればよいと考えています。

 また、最近では、物事に対する寛容さも必要であると思っています。若い頃は、自分の考えがすべてという部分もあり、また、仕事を自分が支えるという環境の下で時には必然的に、他人の意見にあまり耳を貸さない面もあったと思いますが、最近は物事の2面性について理解するように心がけ、多少自分の価値観と異なっている部分があっても受け入れることができるようになってきたのは、事実です。この変化は、国際部門に配属されてから、それまでとは、まったく別の視点で物事を捉えることができるようになったことにも起因していると思います。これは、仕事と家庭の両方で言えることだと思います。


−余暇の過ごし方、趣味などについて

 若い頃は、平日いくら残業続きであっても、土日は必ず外へ出かけていたものです。スキーやテニスに興じていた頃が懐かしい気もします。

 子供ができてからは、外へ出て行く頻度も減り、活動範囲は狭くなっていたのですが、シカゴは、子供を連れて行くところも多いので、休日にはできるだけ、7歳になる双子の息子達を一緒に外出するようにしています。 子供達は公園での遊びやサッカーなどが好きなので、近頃では、地域のコミュニティーサークルにも登録し、活動の範囲を広げています。


 日本にいた頃は、家族で海外旅行によく行きました。子供にとって、今回の米国は、6回目の海外渡航になります。22歳で初めて海外に出た自分との違いに、驚いています。

 また、若いことからギャンブル全般が好きで、気分転換に競馬場に足を運んだり、海外のカジノのあるところを中心に旅行したりしたこともあります。しかしながら、あまり、のめりこまずというのをモットーにしています。カジノの必勝法というのはないとは思いますが、十分な分析をしてから臨むおかげか、今までのギャンブルでは、勝ったり負けたりの楽しめる範囲内です。また、分析には、推理小説のような楽しみもありますので、そういう面を楽しんでいます。


−今後やりたいことについて

まず第一には、姉妹都市として30年以上も良好な関係を保ち続けている当地シカゴにおける大阪市の認知度向上に大阪市の代表事務所として努めていきたいと考えています。
 また、大阪市シカゴ事務所の最大のミッションは、経済交流ですので、大阪市が定めるロボット、健康福祉、IT、環境などのいわゆる次世代産業分野における経済交流の活発化に努めたいと思います。
 3月着任早々、当地で開催したバイオ2006大阪セミナーや来週からピッツバーグで開催されるロボビジネスでの大阪セミナーなどを通じて、1社でも多くの米国企業に大阪でのビジネスに興味を持ってもらうというのが、最大の目標です。
 来週も、大阪市がスポンサーしているピッツバーグにておこなわれるロボビジネスのオフィシャルプログラムである船上パーティーにおいて、大阪市の初の取り組みになる船上セミナーを実施します。セミナーでは、2006年2月に大阪に行った米国企業2社に大阪の印象を語っていただくことを通じて、米国企業に大阪のいい印象が伝わればよいと思っています。また、大阪=ロボットと連想していただくための企画として、抽選会を行い、今秋発売のロボットを景品に出すことなどを計画しています。
 更に、来年、米国でのもうひとつの姉妹都市であるサンフランシスコ市との姉妹都市提携50周年を迎えますが、この記念事業の一つとして、文楽の米国公演について、現在調整中です。是非、シカゴで初めての事業となる世界遺産「文楽」の公演を実現させたいと思います。
 自治体職員にとって、海外勤務は極めて稀なケースなので、この折角の機会をエンジョイできるように、仕事だけではなく、海外生活を楽しめればいいと思っています。と、言っても、今はいろいろと大変なことばかりでストレスがたまる一方ですが、もう少し余裕ができてからというところでしょうか。


−US新聞読者へのメッセージ

 大阪に関して、どんなことでも結構ですので、お問い合わせいただければお答えいたします。

 一人でも多くの方に大阪サポーターになっていただき、大阪のビジネスや大阪への観光に行っていただけるように努力いたします。


 ロボビジネスを目前に控え、とてもお忙しい最中のインタビューとなりましたが、真摯に、そして、ざっくばらんにお答えいただいた。仕事や家庭について、お心配りのある暖かい視点がとても印象的である。姉妹都市のシカゴ市もビジネスの誘致や観光に力を入れていくということであるが、今後も大阪市の代表者として重責を担っていかれることと思う。

2006年6月14日@大阪市シカゴ事務所
文責:鴻田写真:藤河

鳥山氏筆:大阪市シカゴ事務所「シカゴだより」

■鳥山孝之(TAKAYUKI TORIYAMA)氏 略歴紹介

1984年 大阪市立大学商学部卒業
1984年 大阪市職員
 同5月 中央卸売東部市場管理係
1987年 大阪府派遣
1989年 中央卸売市場庶務課経理係
1993年 中央卸売市場庶務課主査
1997年 経済局中小企業部国際経済課主査
1999年 経済局中小企業部国際経済課国際経済係長
2001年 経済局企画部副参事
     ((財)大阪国際経済振興センター出向)
2006年1月 大阪市経済局参事
2006年3月 大阪市シカゴ事務所所長  現在に至る


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