吉田雅治総領事インタビュー記事

 2013年1月25日、在シカゴ日本国領事館の新総領事として吉田雅治氏が着任した。外務省入省後は中国語を専攻、17年間の在外勤務の内9年間を、在広州領事館総領事時代を含めて中国で過ごした“中国の専門家”。沖縄では県庁勤務、経済協力局では主にアジア諸国との経済協力に携わった。アメリカ本土への本格的赴任は今回が初となる。


― 中国でのご経験が長いのですが、当時のはどのような印象だったのでしょうか?

 「私が最初に中国に行ったのは1979年、前年の1978年末にケ小平の「改革開放」政策が決まったところで、今の中国とは全く違っていましたね。中国国内の変化も大きいし、日本とのかかわりも歴史的、経済的に非常に大きい。日本にとってはずせない関係になっていましたから、仕事としての面白さはありましたね。」

― 広州総領事時代に力を尽くされたことは何でしょうか?

 「広州は中国で最初に開発が進んだところのひとつです。私が着任した当時は、日本の自動車産業が本格的に広州に工場を建てた頃でした。自動車産業は「総合産業」と言われるように、これと共に電気電子、鉄鋼、ゴム、繊維など日本の産業が一気に進出した時期でした。それにしたがって、労働契約法などの法律や税制が大きく変わってきた転換期でもあったわけです。そのため、制度やインフラ、税関の問題などが大きく変わる中日本企業と中国側の間をうまく支援し、新しい経済体制でうまく日本の企業のお手伝いをするのが総領事の仕事でした。具体的には、税務署や税関他いろいろな機関に月に2回くらい出向いて話し合いをしました。
 たとえば、工場を建てたけれどそこにインフラが追いつかない、道路が渋滞して工場の操業に支障をきたしている、と役所に言いに行くとそこが立体交差になる、というようなこともありうるわけです。いろいろな声を出していくということが大事なのです。広東省(広州)は昔から“産業を興す”ということには力を入れていましたから、ある意味フレキシブルで話はよく聞いてくれましたね。」

― アメリカへ赴任された経緯についてお聞かせください。

 「サラリーマンですから、行けと言われたところには行きます(笑)。自分で選んで行くわけではありませんが、アメリカは日本にとって一番重要な国ですし、私自身もいろんな意味でアメリカという国に興味がありましたのでお話があった時は喜んでお受けしました。
 また、これまでの職務でもアメリカとの交渉や交流は頻繁にありました。(日本大使館参事官を務めた)フィリピンも長くアメリカ領で密接なかかわりがありますし、(1995年から3年間務めた沖縄県事務吏員時代の)沖縄でも米軍基地問題を担当して騒音問題などの交渉をしていました。また、(1999〜2001年の国連行政課長時代)国連の予算関係でアメリカの政府の方と話し合いをしたり、エネルギー問題でアラスカに行ったりした関係で交流はありました。」

― アメリカに抱いていた印象と実際の違いについて


 「アメリカにこの前にいたのは(プリンストン大学留学時代の)1981年ごろでもう30年以上前ですが、それから大きな変化はあったと思いますが、率直でオープンマインドという点でアメリカはある意味変わっていないという印象です。つまりすでに今のアメリカの良さは昔から変わらないのかもしれませんね。」

― 2か月間過ごされてみてシカゴ〜中西部の印象はいかがですか?

 「私がここで感じたのは、中西部の方が日本の文化や歴史についてかなり関心をもっていらっしゃるということです。最近ですと新しい政権のことで日本が何をしようとしているのか、日本は変わったのか、という質問をよく受けます。
 また、最近当館で「日本語弁論大会」をやりましたが、言語のレベルがかなり高いので驚きました。日本語をよく勉強されているし日本への関心も高いということでしょう。ただ、関心の割には東海岸・西海岸などに比べて中西部に情報が十分に入っていないのかもしれません。日本という国のVisibility(可視性)が本来あるべきものよりも少ないんじゃないかと思います。これには、日本全体としてもっと説明をしていかなければいけない。
 中西部には日本の企業も多く進出しており、こちらで雇用もしていることを考えると本来ならばもっと知られている存在であるべきなのかなという気はします。それには、例えば新日鉄住金がシカゴ美術館付属美術大学の学生を支援する活動を長年続けていたり、シカゴ日本商工会議所が各種日本文化イベントを主催したりというような、企業の活動を今まで以上にどんどん進めていって、我々の存在をもっと示していかなければと思います。」

― 総領事としてのミッションとその秘策をお聞かせください。

 「今の日本の現状を知っていただくことですね。例えばたくさんのご支援をいただいた大震災からの復興がこのように進んでいますよという実績や、経済レベルは震災前を超えていること、物価上昇率がプラスになっていることなどを、外の人に話して「伝えていく」こと、そしてうまく理解してもらうこと、その上で日本に信頼を持っていただくことが仕事だと思っています。そのためにまずはいろんな会合に出ていろんな方にお会いして、まず覚えていただくようにしています。」

― シカゴの魅力は何でしょうか?

 「ひとことで言うと、いいところが集まっている街。文化的なインフラ、世界一流のものが大学も含めて全てそろっている。その上で非常にコンパクトにまとまっているので、一日二日でも十分楽しめるしリピートしても何度も違った味を楽しめるところですね。観光資源としてのポテンシャルはかなりあると思います。
 それにこんな便利なところはないですよね。ニューヨークでメトロポリタン美術館とカーネギーホールに行ってブルーノートでJazzを観ようとすれば一日の移動が大変だけれど、ここなら全て歩けますからね。しかもトップクラスのものが見られますから。アメリカ人でさえ「シカゴのオペラがこんなにレベルが高いとは知らなかった」と驚きます。
 一方で、シカゴはアメリカ国内の観光地としてはかなり成功しているのに、日本人には良さが十分知られてないのが残念ですね。ニューヨークフィルやボストンフィルと同じように、シカゴフィルについて知っていただきたい。メトロポリタンやナショナルギャラリーと同じように、シカゴ美術館の素晴らしさももっと知っていただきたい。シカゴ市も日本からの観光客誘致に力を入れていますが、知ってもらえればこんないいところはないのかもしれません。」

― 着任されてから“これぞシカゴ”というご経験はございましたか?

 「先日、午前中(シカゴ美術館に)「ピカソ展」を観に行って、そのあと(シカゴシンフォニーホールへ)Anne-Sophie Mutter(アンネ=ゾフィー・ムター)のバイオリンソナタを聴きに行ったんですよね。これは日本ではなかなか一日ではできないですよ。まず美術館に入るのに1時間は待たないといけない(笑)。アンネ=ゾフィーのチケットを買ったのは1週間くらい前でしたが、そういうことはまずありえないですよね。
 仕事が終わって“Chop House”でステーキを食べて、そのあと“Blue Chicago”に歩いて行ってブルースを聴く、とこんなこともなかなかできないでしょう?そういう経験をすると、こんな便利なところはないと思いますよ。

― シカゴは安全性を指摘されることが多いですがどのようにお感じですか?

 「ややもすると、シカゴの街は危ないのかという印象を持たれがちですが、そんなことはないですね。私も普通に地下鉄に乗ったりしていますが、時間帯やエリアに気を付ければそれほどの脅威を感じたことはありません。また、1年前に比べると統計上はバイオレントな犯罪は減っています。先日シカゴ市長にお目にかかったとき、銃の問題についても少しお話をしました。率直に問題提起をしたり関心を持っているということは伝えるべきですから。 また、シカゴ市が今後進めようとしているサウスサイドの開発などが上手くいけば徐々に良くなっていくんじゃないかと思っています。」

― プライベートで挑戦してみたいことは何でしょうか? 

 「車で時間をかけてぐるっとアメリカ国内を旅行してみたいですね。中西部を中心に、いろんなアメリカの実際の街を実際に見てみたい。それに、趣味でジョギングをしているのでシカゴマラソンにはいつか挑戦したいと思っています。シカゴマラソン以外でも、いろんなところでマラソンがあるので挑戦してみたいですね。」

― 読者へのメッセージをお願いいたします。

 「日本の方々には、シカゴについてさらに興味を持ってほしい。そして是非いらしていただきたい。一日二日でもシカゴは十分いろんなところに行けるし、持っている時間に合わせてうまく組み合わせができる、しかもトップクラスのものが味わえます。また、シカゴで活躍されている日本人の方々の活動も是非見ていただきたいですね。」



いかにも3人のお嬢さんを持つ父親らしい、穏やかな“癒し系”の雰囲気がにじみ出ている吉田総領事。独り立ちされたお嬢さん方を東京に残し、現在は奥様と二人シカゴで暮らす。「今のところ入ってくるアポイントは全部受けていますから、なかなか週末が空くことがないんです」とおっしゃるように、精力的にシカゴ〜中西部の各所を訪問される毎日。車でゆっくりとアメリカ旅行を楽しむ日は当分お預けのようだ。



2013年3月28日@在シカゴ総領事館総領事室

                                  文責:長野尚子  写真:藤河信善



■吉田雅治(よしだまさはる)総領事 略歴:

1955年7月 岡山県生まれ
1978年 3月 東京大学教養学部教養学科卒業
4月 外務省入省
1995年10月 北米局日米安全保障条約課企画官
1995年11月 沖縄県事務吏員 総務部参事
1998年2月 外務事務官 経済協力局調査計画課長
2000年2月 総合外交政策局国際社会協力部国連行政課長
2002年8月 在フィリピン日本国大使館 参事官
2003年1月 公使
2005年7月 在中華人民共和国日本国大使館 公使
2007年8月 在広州日本国総領事館 総領事
2011年7月 衆議院参事国際部長
2013年12月 外務事務官 在シカゴ日本国総領事館 総領事

家族は、夫人と、娘3人(東京在住)
趣味は、ジョギング。



在シカゴ日本国総領事館(Consulate General of Japan at Chicago)情報
住所:737 North Michigan Avenue, Suite 1100, Chicago, IL 60611
Tel: (312)280-0400(24時間対応)

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