“SFファンの世界集会“第70回サイエンス・フィクション・コンベンション(Worldcon)”

 
 今やすっかり世界を席巻している“オタク文化”。でも、その元祖を知っている人は意外と少ないかもしれない。オタク文化の始まりは、アメリカで1939年に始まり(戦争中の1942年から1945年までを除いて)毎年続けられている“ワールドコン”(正式には“The World Science Fiction Convention”、別名“世界SF大会”)。世界SF協会(World Science Fiction Society)が主催し、ワールドコン開催地のファンや世界各地から集まったボランティアが運営を行っている、“SFファンの世界集会”だ。
 もともとはアメリカで始まったワールドコンだが、名前で「世界」とうたっているようにSF文化を広く世界に知らしめようという主催者の思惑もあって、アメリカ以外での開催にも積極的だ。開催地選びはすべて来場者のファンによる投票で決められ、今までに、ロンドン、オーストラリア、カナダ、オランダ、ドイツ、そして2007年にはアジアではじめて日本でも開催されている。

 そして今年はめでたく開催70周年、その記念すべき大会の開催地に選ばれたのがシカゴだ。シカゴでの開催は、2000年に続き7回目となる。
 8月30日から9月3日までの5日間、会場となったハイアットリージェンシーホテルでは、SFのアート展示や、さまざまなSF関連グッズの販売、400以上もの各種講演やファン交流イベント、チャリティーイベント、パーティーなどが行われ、世界各地から詰めかけた大勢のSFファンでにぎわった。
茶道を通じてアニメ大国、日本の文化を学ぶコーナーも。






                          ワールドコンの歴史を紹介するパネル展示 

 また、大会期間中の大きなイベントのひとつが、ワールドコン参加者の投票によって決められる「最も歴史の古いSF賞」、ヒューゴー賞の発表だ。アメリカSF界の功労者、ヒューゴー・ガーンズバックにちなんで命名された栄誉ある賞で、作品賞、短編賞など約15のカテゴリーからなる。


会場には過去の開催地ごとのヒューゴー賞のトロフィーも展示されており、このウルトラマンをかたどったものは日本開催のときのもの。

日本から「マクロスU」の井上博明監督も来場
 今回、日本から参加した来場者の中に、日本開催時(2007年・横浜)のチェアマンで映画「マクロスU」のプロデューサーとしても知られる井上博明氏(株式会社オニロ)の姿も。井上氏がシカゴを訪れるのは、実は今回が3回目。
 初回は2004年、「サウンド&ビジョン2004 in シカゴ」というアニメイベントへの参加だった。これは、アメリカのアニメファンに日本文化の代表としてのアニメをより深く知ってもらうためのスペシャルイベントで、日米アニメファンの国際交流やアニ大使の派遣など、ユニークな試みが行われた。 
 それが契機となり、2006年に「第42回シカゴ国際映画祭」にあの『機動戦士Zガンダム』3部作が日本のアニメ映画として初めて招かれ上映された際、ガンダムシリーズの監督であり“日本アニメの革命児”と呼ばれた富野由悠季氏とともにアメリカのファンの前でトークを繰り広げた
(詳しくは過去の記事をご覧ください:http://www.usshimbun.com/events/gundam-tomino.html

 31日夜に行われた井上氏を囲んでの懇親会では、今後さらに日本のコミックをアート、文化としてアメリカに広めていくための“作戦”が練られた。なかでも、日本の若手マンガ作家の原画をアメリカで展示、即売する手段についてはいろいろな方面から意見が交わされた。
 アメリカでは(特に美術館)、アート作品としてのマンガの位置づけはまだまだ低く、「展示することで品位を下げるという危機感もありまだまだ後ろ向き」(シカゴ美術館附属美術大学・斉藤博子氏)なのが現状。その壁を戦略的にどう乗り越えていくかが重要になってくるようだ。
 (左から)カナダ開催時のチェアマン、レネ氏、北米のペギーさん、井上氏。3国揃い踏み。


「マンガは言葉の壁をのりこえられるもの」

 井上氏はこう語る。 「日本のコミックオタクの原点は、ワールドコンでありアメリカだった、実はこのことを知らない人が多いんです。これからも人と人との交流を通してアメリカの文化を日本に紹介し、その関係を再度きちんと伝えていきたいと思っています」
 東北大震災の際、アメリカのメンバーからの申し出で、日本とアメリカのイラストをお互いのファンに販売するというチャリティーオークションが開かれ、その売り上げの全額が被災地に図書館を建設するための費用に寄付されたという。このような、SFでつながった震災支援交流も存在したのだ。
 「マンガは言葉の壁を乗り越えられるものです。海外のファンの人たちの支援のお蔭で日本のアニメが世界的なものとなり、今では政府も支援に乗り出すようになりました。日本の位置づけを世界にわかってもらいながら、これからも新しい発見をしていきたいですね」と井上氏。
 日本のコミック文化がアメリカに、世界に真の意味で浸透していくこれからに、アニメファンの一員として期待していきたい。


※参考サイト
●Chicon 7, the 70th World Science Fiction Convention プログラム
http://www.chicon.org/program/

●その他のSF関係サイト
World Science Fiction Society (ワールドコンを統括している)
http://www.wsfs.org/

●Nippon2007
http://www.nippon2007.us/

●宇宙軍 (井上氏を中心としたメンバーが35年前からやっているSFサークル)
http://www.space-force.org/


                                      取材・文・撮影/長野 尚子

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