シカゴ美術館 特別展 
『 Picasso and Chicago ピカソとシカゴ』ともに歩んだ100年間



 1913年、アメリカ合衆国で最初にピカソの作品を展示した美術館はシカゴ美術館だった。ヨーロッパの近代美術を紹介した大規模な展覧会『アーモリー・ショー Armory Show 』は同年ニューヨークで最初に開催、その後シカゴとボストンを巡回したが、美術館が公式会場となったのはシカゴのみだった。この時ピカソの他、マティス Matisse 、ブランクーシ Brancusi 、デュシャン Duchamp の作品が、アメリカでは初めて美術館で展示されている。シカゴ美術館ではこれを記念し、5月12日までシカゴとの関わりからピカソの偉業を振り返る特別展を開催中だ。

 パブロ・ピカソ (Pablo Picasso) は1881年にスペイン王国のマラガで美術教師の長男として生まれ、1973年にフランスのムージャンで満91歳で生涯を終えるまで、14万8千点近い作品を制作した。現在もなおギネスブックに最も多作な美術家と記され、その記録は破られそうもない。また80年にわたる創作活動のなかで画風を10回近く大胆に変え、その殆どに「〜の時代」と名前があり、美術界のトレンドに影響を及ぼした。パリで挫折した経験から、乞食など社会的な弱者を青い色で描いた「青の時代」と、超現実主義に感化されて奇怪なモチーフが登場した「シュルレアリスムの時代」は広く知られるところだ。

 ピカソが盟友ブラック Braque と創始したキュビスム(立体主義)Cubism は特に重要である。従来の画家が遠近法をもとに一つの視点から画像を再現してきたことに対して、ピカソとブラックは対象を多角的に眺め、形態を解体して単純化した上、再構成して一つの画面に収めた。物質の存在そのものに迫り、絵画でしか成しえない表現法は、鑑賞者中心の絵画制作から美術家中心の絵画表現となり、近代美術の幕開けとなった。

 シカゴ美術館はピカソの作品を400点ほど収蔵しており、その中から今回は約250点を展示している。青の時代の『老いたるギター弾き The Old Guitarist 』(1903 〜 04年) 、キュビスムの傑作でドイツ人画商の姿を描いた『ダニエル = ヘンリー・カーンワイラーの肖像 Daniel-Henry Kahnweiler 』(1910年) は共に同美術館を代表するコレクションだ。『母と子 Mother and Child 』(1921年) は父親も含めて三人家族となるはずだったが、ピカソは気に入らずに父親像のみ切り取ってしまった。この削除部分は特別に公開されている。当時の愛人がモデルとなった『赤い肘かけ椅子 The Red Armchair 』(1931年) も実にピカソらしい作品だ。

 二つの世界大戦と母国スペインの内乱を体験したピカソは平和主義者だったが、自分の欲望には正直で、結婚後も年若い愛人が途切れることはなかった。自身のエゴと老いに直面する中、その表現は彫刻、陶芸、詩作にまで広がっていった。


『老いたるギター弾き The Old Guitarist 』1903 〜 04年
(c) 2013 Estate of Pablo Picasso / Artists Rights Society (ARS), New York

(左から) 
『ダニエル=ヘンリー・カーンワイラーの肖像 Daniel-Henry Kahnweiler 』1910年 (c)2013 Estate of Pablo Picasso / Artists Rights Society (ARS), New York
『母と子 Mother and Child』1921年 (c)2013 Estate of Pablo Picasso / Artists Rights Society (ARS), New York
『赤い肘かけ椅子 The Red Armchair』1931年 (c)2013 Estate of Pablo Picasso / Artists Rights Society (ARS), New York


 1963年、シカゴ市の行政ビルの一つであるシビック・センター Civic Center (現在のリチャード・J・デイリー・センター Richard J. Daley Center)の建設に際し、正面広場に設置されるモニュメントのデザインを依頼されたピカソは喜んで引き受けた。それが高さ約15メートル、重さ約147トンの『無題 Untitled 』だ。この鋼鉄製の巨大彫刻は、下の方が滑り台になっており、欧米では『シカゴのピカソ Chicago Picasso』と呼ばれている。馬、犬、マントヒヒなどに見えるが、ピカソが作品のモデルについて説明しなかったために1967年の完成以来、真相は謎に包まれたままだ。シカゴ美術館での大規模なピカソ展は30年ぶりで、今回は『無題』に関する初期のデッサンやマケット (建築用モデル) など珍しいものが多く展示されている。
『リチャード・J・デイリー・センター彫刻のためのマケット/Maquette for Richard J. Daley Center Sculpture 』1964年 (c)2013 Estate of Pablo Picasso / Artists Rights Society (ARS), New York



◆The Art Institute of Chicago
Regenstein Hall
111 S. Michigan Avenue, Chicago, IL 60603
312 - 443 - 3600
http://www.artic.edu

"Picasso and Chicago"
http://www.artic.edu/exhibition/picasso-and-chicago

毎日 10: 30 〜 17: 00 木曜のみ 20:00 まで
一般 $23 シニア・学生 $17 14歳未満は無料
シカゴ市在住者 一般 $18 シニア・学生 $12
イリノイ州在住者 一般 $20 シニア・学生 $14
木曜17時から20時までイリノイ州在住者のみ入館無料
(身分証明を提示すること)


                   (文責:斉藤博子 Text by Hiroko Saito)

 

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