シカゴ・ヒューマニティズ・フェスティバル 『近藤麻理恵トークとサイン会』
Chicago Humanities Festival (April 28, 2017) : An Evening With Marie Kondo


 「人が人として生きる意味を探る」という究極のテーマを掲げ、伝統的な文化や知識の壁を越えてさまざまな暮らしのヒントやアイデアを共有するプログラム、「シカゴ・ヒューマ二ティーズ・フェスティバル」。アート&カルチャー、政治&社会、科学&テクノロジーのカテゴリーで、文化人を招いて毎年春に講演会などを行っている。
 今年4月28日のオープニング講演は、日本の片づけコンサルタントとして世界的に注目される「こんまり」こと近藤麻理恵(以下“こんまり”)。著書『人生がときめく片づけの魔法 The Life-Changing Magic of Tidying Up and Spark Joy』は、2010年の初版以来42カ国語に翻訳され、700万部を越える驚異のベストセラー。2015年、アメリカのタイム TIME 誌による『世界で最も影響力がある100人 The 100 Most Influential People』に、日本人では小説家・村上春樹とともに選ばれた。世界が注目するこんまりがアメリカでどのようなTidy(片づけ)の魔法を語るのか、大いに期待・注目された。アメリカは消費天国。地球上のどの国よりもモノを買い、捨てている。モノにあふれた日々の生活をどのようにしてTiding Upしていくかは、非常に重要なテーマのひとつで、多くの人が関心を持って集まった。。


会場の「ハリスシアター」には、少しでもいい席を撮ろうと開場前から長蛇の列ができた。
Photo Credit :Ben Gonzales

 午後7時半からの講演に集まった観客は、99.9%が女性。40〜50代がほとんどを占めたが、熱狂的なファンらしき20代後半〜30代前半の女性たちの姿も。こんまりがステージに登場すると、あちこちから黄色い歓声があがる。ミニスカート姿で鈴のなるような声で話す風貌からは、講演というより日本からアイドルがきた、という印象だ。

モノとじっくり向き合うことは人生と向き合うこと
 「I am crazy tiding fanatic, but I am not a minimalist. Less is not always more. (私は整理整頓オタクですが、決してミニマリスト(最小限主義者)ではありません。少ないことは、必ずしも“より豊かなこと”ではありません。)」 講演は、この言葉で始まった。「片づけることとはつまり、人生や仕事や人との関係性をも見つめ直すこと。何が自分にとって大切かを自問することなのです」
 世にいう「こんまりメソッド」が世界で爆発的な人気を博したのは、片づけを単なるノウハウはなくフィロソフィー(哲学)として共通言語化したところにある。そのうえで、具体的な4つのルールを紹介。

Photo Credit :Ben Gonzales

ルール@
 Imagine Your Ideal Life: 自分自身をみつめること。どういう生活を送りたいか、具体的な絵を描くこと。
ルールA Tidy Is One Go : 片付けは少しずつではなく、期限を決めて一気にやる。
ルールB Tidy by Category, Not by Location : 片付けは「部屋ごと」ではなく「種類」で行う。そして、衣服なら家中にある全ての衣服をひとつの場に出して仕分けをする。
ルールC Choose What Sparks Joy :捨てるモノよりも、残すモノに的を絞る。何が自分にとってトキメクのか?で選ぶ。

 特に、Cのトキメキ(Spark Joy)はこんまりメソッドのキーワード。「ひとつひとつのものを触ってみて、心がトキメクかを自問しましょう」と、セーターを使って彼女自身が“実演”して見せた。これには観客から何とも表現しがたいどよめきが。

 これがトキメキの瞬間「きゅん!」

45分ほどの講演のあとは、通訳を介しての質疑応答タイム。会場のあちこちから一斉に手が挙がった。以下、実際に寄せられた質問とこんまりの回答を紹介しよう。

Q: 全てのものにトキメいてしまいます。どうしたらいいでしょう?
A: そういうときは、Love Weekを設けて徹底的に向かい合ってみましょう。それでもなおトキメいていたら残す。その場合、残ったモノに対しては堂々としていてください。

Q: 私は片づけたいのにパートナーが積極的ではないのですが?
A: 夫婦、ルームメイトでも収納場所やエリアは明確に分けましょう。エリアを決めたらその中で責任を持って整頓する。大切なのは、相手のエリアがどうなろうと口を出さないこと。


Q: こんまりメソッドを実践した人のうち、リバウンドしてしまう人はどれくらいいるのでしょうか?
A: リバウンド、というのはまずないです。時間がかかるので途中で離脱してしまう人はいますが、メソッドを実践して成功した人がもとの状態に戻るということはありませんでした。


Photo Credit :Ben Gonzales


Q: どうして本を出したのですか?2冊目を書いた理由は何ですか?1冊目の本で何か書き忘れたのですか?(7〜8歳くらいの女の子)
A: 1冊目を書いたのは、1対1のレッスンをしているときに、次のお客さまの待ち時間が半年待ちになってしまって、「待てないから本を書いて(教えて)」と言われたのがきっかけです。2冊目では、1冊目で「まだうまくできない」と言う方がたくさんいらっしゃったので、完了できない人への質問にこたえるために書きました。

Q: いただきものなど、捨てるに捨てられないものなどはどうすればいいのでしょう?
A: こっそり捨てます。(会場爆笑) いただきもので処分に困るものは、一定期間飾ってみたり実際に身に着けてみたりしてじっくり向き合ってみましょう。そのうえでどうしてもトキメかなかったらごめんなさい、と捨てるか、それを必要とする誰かにもらっていただく、ドネイションに出す、などすることをおすすめします。

Q: 子供の工作など小さい頃の思い出の品が捨てられません。
A: お子さんと一緒にモノに向き合ういい機会だととらえましょう。一度全部まとめて出してみて、お子さんに大事なものから順番をつけて選ばせるというジョイ・チェックを一緒にしてみましょう。

国際色豊かなオーディエンスと、様々な感想
 お隣に座っていた女性(50代後半)は、なんとアルゼンチンからこの講演を聞きにやってきたという。「アルゼンチンでこんまりは大ブームなの。その理由をどうしても知りたくて。」 彼女に講演の感想を聞いてみた。
 「私はよく娘や孫たちから片づけに厳しすぎる、と言われるの。整然とした部屋で心地よく過ごしていたいだけなのに、そう言われるたびになんだかとてもいたたまれなくなる。大切なものは心の中だけに残せばいい。だから母のものなども思い切って整理してきた。そんな罪の意識はどうやって処理したらいいのか知りたい。そんなもっと内面のことを深く掘り下げて話してほしかった。ハウツーよりも、背景にある文化や教育に言及するのかと思っていたからちょっと拍子抜けだったわ」
 彼女のようにニュートラルな聴衆として参加した人と、もともとこんまりのコアなファンで、彼女見たさに参加した人たちとの間には温度差があったようだ。

 一方、こんまりの大ファンというアシュリーさん(32歳・アメリカ)は、「最前列で見たの。すごくうれしい!」と興奮冷めやらぬ様子。実際のところ、こんまりメソッドの効果はあったのか?何が一番ぐっときたのか、と尋ねてみると、「とても役立った。このおかげで部屋がとても片付いたと思う。特に心にささったのは“Sufficiency(十分であること、足りること)”。収納を考えて余計なものを増やさないようになった。それと“Spark(トキメキきゅん)”ね!」
 こんまりを見るためにわざわざドバイ(!)から来た女性もおり、講演後のロビーで本を手にわくわくとサインと記念写真を待つ若い女性たちの目は、まるでアイドルを見るかのように輝いていた。また、日本から有名人が来ると観客のほとんどは日本人が占める事が常だったが、今回は真逆。これほどまでに非日本人を集めた講演も珍しかった。


講演後、ロビーで本のサインに応じるこんまり。(左)後ろが見えないほどの長蛇の列。
残念ながらここでの個別質問は受け付けられなかった。

コンシューマー・モンスター天国”、アメリカに必要なもの
 国土も住まいも狭い日本で生まれた、ある意味「神道的」ストイックな整理術が、広さも文化も違う異国でどのように受け止められ実践されているのか。この日、アメリカでこんまりはそこにどう切り込むのかに大いに興味があった。“コンシューマー・モンスター天国”アメリカに住んでいると、増えすぎたものの片づけを論ずるまえに、理由なくものを買わない、使えるモノは捨てず長く使う、もったいない精神を根付かせるほうが先じゃないのか?と日々感じてしまう。つまりは、教育。そして常に己を知り、足るを知ること。シャツのたたみ方は、実はそのずーっとあとかもしれない。「Tidy」は、豊かさを享受した人類永遠の課題なのだ。




        写真・文責: 長野 尚子  Photo&Text : Shoko Nagano
        取材協力: 斉藤 博子 Media Assistace: Hiroko Saito


■シカゴ・ヒューマ二ティーズ・フェスティバル Chicago Humanities Festival
http://chicagohumanities.org/

■近藤麻理恵
Marie "KonMari" Kondo Office
https://konmari.com/jp/




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