シカゴ美術館 特別展 
『 Magritte: The Mystery of the Ordinary, 1926 - 1938
マグリット:日常の不可思議 1926 - 1938 』
 

 青空、女性の裸体、怪しげな鉄球、パイプ、山高帽の男。日常の身近な物が紡ぎだす現実にはあり得ない画像の数々。ベルギーの画家ルネ・ルネマグリット Rene Magritte (1898 - 1967) が生みだしたイメージは、本人の没後半世紀近くが過ぎた今もなお世界中の人たちを魅了して止まない。

 マグリットはスペインのサルヴァドール・ダリ Salvador Dali と並び、シュルレアリスム (超現実主義) Surrealism を代表する画家だ。シュルレアリスムは20世紀前半に起こった芸術運動のなかで最も重要な一つで、意識下の世界や不合理・非現実な世界を探求し、それまでの常識にはとらわれずに表現したもの。

 ブリュッセル王立美術アカデミーに学んだマグリットは、卒業後にイラストレーターやデザイナーとして働いていた時期にシュルレアリスムに触れた。1926年から本格的に絵画制作を開始、1927年から3年ほどパリで過ごし、この時期にシュルレアリスム運動のリーダーだった詩人のアンドレ・ブルトン Andre Breton や先述のダリらと交流を深める。その後1930年にブリュッセルに戻り、弟と設立した会社に勤めながら、アトリエを持たずに自宅の台所で地道に創作を続け、1967年に68歳で生涯を閉じた。

 1926年から第二次世界大戦が始まる前年の1938年まで、28歳から40歳までの12年間にマグリットは、まさに特徴といえる幻想的で奇抜な作品を数多く制作している。この時代に作られた118点のデッサン、絵画、コラージュなどを展示したのが10月13日まで開催されているシカゴでの特別展だ。この展覧会はアメリカでもマグリットの作品を多く所蔵する三つの美術館(ニューヨーク近代美術館、ヒューストン・メニル・コレクション、シカゴ美術館)が共同企画し、これら三カ所で順次行う巡回展で、シカゴが最後の開催地である。


『白色人種 The White Race (La Race blanche) 』 (1937年)
The Art Institute of Chicago, promised gift of Ruth Horwich. (c) Charly Herscovici - ADAGP - ARS, 2014


『自由の戸口で On the Threshold of Liberty (Au seuil de la liberte) 』 (1937年)
The Art Institute of Chicago, gift of Mary and Leigh Block, 1988.141.10. (c) Charly Herscovici - ADAGP - ARS, 2014


『貫かれた時間 Time Transfixed (La Duree poignardee) 』 (1938年)
The Art Institute of Chicago, Joseph Winterbotham Collection, 1970.426. (c) Charly Herscovici - ADAGP - ARS, 2014

 『白色人種 The White Race (La Race blanche) 』(1937年) 、『自由の戸口で On the Threshold of Liberty (Au seuil de la liberte) 』(1937年) 、『貫かれた時間 Time Transfixed (La Duree poignardee) 』(1938年) はシカゴ美術館が持つマグリットの作品で重要なものだ。(これら3点は特別展終了後は近代棟3階で常設展示される予定。) それぞれの題名はキャンバス上のイメージを説明するわけではなく、物体の形は明瞭に描かれているが、サイズ、距離、時間の感覚が現実離れしており、鑑賞する者は意外な組合わせに驚いてしまう。

 『白色人種』では女性の裸体がバラバラに並べられ、顔の表情は一切わからない。『自由の戸口で』は密室内に絵柄の異なる8枚のパネルがあり、うち1枚の青空に大砲が向けられている。『貫かれた時間』では時計から時刻は分かるが、昼か夜かは定かでなく、火のない暖炉から煙を吐いて出てくる蒸気機関車に、もはや常識は通用しない。そこにあるのは不可思議な作品世界と奇妙な美しさで、観る者を引き込む力がある。

 このなかでシカゴ美術館を代表する名作が『貫かれた時間』だ。日本語では『刺し貫かれた時間』、『釘付けされた時間』とも訳されている。イギリスの詩人で、シュルレアリスト達を経済的に支援したエドワード・ジェイムス Edward James がロンドンの自宅に飾るべくマグリットに依頼した絵画だ。マグリットは本作を舞踏室へ上る階段の下方に設置して来客を驚かすことを希望したが、この作品を大変に気に入ったジェイムスは舞踏室ではなく暖炉の上の壁面に飾ったという。


『マグリット Magritte 』 撮影:デュアン・マイケルズ (c) Duane Michals


The Art Institute of Chicago
Regenstein Hall
111 S. Michigan Avenue, Chicago, IL 60603
312 - 443 - 3600
http://www.artic.edu

”Magritte: The Mystery of the Ordinary 1926 - 1938"
http://www.artic.edu/exhibition/magritte-mystery-ordinary-1926-1938

毎日 10: 30 - 17: 00 木曜のみ 20:00 まで
一般 $23 シニア・学生 $17 14歳未満は無料
シカゴ市在住者 一般 $18 シニア・学生 $12
イリノイ州在住者 一般 $20 シニア・学生 $14

注) 今回の特別展は無料入館日が適用されない。 木曜17時から20時までシカゴ市・イリノイ州在住者ともに下記料金
一般 $15 シニア・学生 $12 14歳未満は無料。




            (文責:斉藤博子 Text by Hiroko Saito )




ホーム | 初めての方へ | お問い合わせ | 投稿者&ライター募集中! | 規約と免責事項 | 会社概要

Copyright (c) 2005 US Shimbun Corporation. All Rights Reserved.