多佳子さんのイリノイこぼれ話

著者略歴 デイ多佳子

神戸出身。滞米生活21年目を迎えたフリーランスライター。カリフォルニアはバークレーに始まり、サウスダコタ、イリノイと東進して、いよいよイリノイ生活が一番長くなりました。シカゴ・イリノイ大好き人間です。最新刊「観光コースでないシカゴ・イリノイ」(高文研)が日本全国の書店、及び在米日系書店、アマゾンで発売中。

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                     黒龍でもなく黒豹でもなく

 民主党大統領候補バラック・オバマ氏が住むケンウッドの一角に、これまた個人の邸宅のような違うような、立派な建物があるではありませんか。道の反対側には、威嚇のためか、ダミーのポリスカーが二台止められています。そして通りには、若くて、背が高くてかっこいい(ああ、なんというオバタリアンの心境。。。笑)黒の上下で身を固めた黒人のボディガードが立っています。「これは何ですか。誰かのおうちですか」と問うと、にこにこと人なっつこい表情で、「教会です」との返事。ふうん、ダミーのポリスカーにボディガードが必要な教会かあ。。。何かいわくありげだなあ。。。

 シカゴでは、1920年代から、アフリカ系のあいだでイスラム教が広がり、全米最初のモスクが、サウスウォバッシュ通りに建てられたとか。現在、シカゴには、70以上のアフリカ系イスラム教モスクがあるそうです。

 1930年にデトロイトで始まったNation of Islamが、Elijah Muhammadとともにシカゴにやってきたのが1932年ごろ。ケンウッドの教会とは、このNation of IslamのMasjid Al-Faatirという名のモスクで、1987年に、有名なボクサーのモハメッド・アリの経済的援助で、Elijah Muhammadの息子が作ったものです。

 Nation of Islamの教義は、といったむずかしいことはさっぱりわかりません。(笑)ただ、このモスクから道を隔てた斜め向かいの邸宅には、モハメッド・アリが一時期住んでいました。アリさん、現在はSunni Islam だそうですが、一時期は、Elijah Muhammadを心底信奉していたのでしょう。同じように、Elijah Muhammadの愛弟子からSunni Islamに改宗?したのがマルコムX。 マルコムXは、1950年代からNation of Islamの全米スポークスマンとなり、シカゴでは、Mr. Muhammad Speaksという新聞を発行、全米60万の発行部数を誇りました。それなのに、1964年にNation of Islamから離れ、翌年2月、ニューヨークで、Nation of Islamのメンバーに殺されます。Elijah Muhammadの嫉妬を買ったのが一因かも、とか。。人間寄れば、どこでもいろいろあるんですねえ。

 このElijah Muhammadに接触したらしい日本人がいます。Elijah Muhammadがシカゴに移ってくる前のデトロイトにいた高橋某さん。1930年代、日本がいよいよ満州への侵略をはじめた頃、高橋さんは有色人種の団結を謳ったそうです。明治34年(1901年)に日本で設立された超国家主義団体、黒龍会のメンバーと自らを紹介したらしい。ふ〜〜ん。その高橋さんのことを、Elijah Muhammadはけっこう気にいっていたそうな。ふ〜〜〜ん。。人間寄れば、ほんとにいろいろあるんですねえ。

 マルコムXは、奴隷を所有した人間の姓は名乗らない、と、本名Little からXに変更したようです。そして、「White people are devils」とも言ってます。そのマルコムが死んだ翌年、1966年に誕生したブラックパンサーたちの抗議活動の写真を見ていると、「Yellow Peril Supports Black Power」というサインを、アジア系の人間が掲げているのを見つけました。数は力―白人支配に立ち向かうには、黒と黄色が団結しなければならない―第一次大戦後の平和会議での人種差別的扱いに怒り、国際連盟を脱退した日本政府、1930年代のデトロイトかシカゴでうろうろしていたらしい日本人、「アジア人のアジア」−大東亜共栄圏を掲げ、太平洋戦争に突っ走った日本。。そして敗戦。。あれから63年。。

 いよいよアメリカでは、白人がマイノリティになる、というニュースが流れるようになりました。それでも人種問題がなくなることはまずないでしょう。とわかっているからこそ、ただ手をこまねいていたくない。黄色い人間に何ができるのだろう。どうやって生きていったらいいのだろう。Takako X (笑)−黒龍でもなく、黒豹でもなく。。。アメリカで生きる限り、自問は続きます。

 Elijah Muhammadは1975年に死亡、現在のNation of Islamは、Louis FarrakhanとElijah Muhammadのもう一人の息子が引き継いでいるそうです。


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