藤河さんのシカゴはクール



著者略歴 藤河信善

現住所:シカゴ(USA)
職業:分子生物学者/Ph.D(日本、アメリカ、ドイツの大学で研究歴)、映像作家、旅行家。
で、誰あんた?:医学部で働いたり、ラオスの山中を山岳民族と渡り歩いたりと、大志無く、ただ赴くままに生きているジプシー人生。


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*釣りをしてみたいんだけど初めてで不安、釣りが好きなんだけ何処へ行けば大きな魚が釣れるのかわからない、トローリングに同乗して欲しい、アメリカ人ガイドでは英語が不安という方は、「wanderphoto[at]live.com」まで。



                 中西部釣り紀行その6


ハックルベリーフィンの大ナマズ

 イリノイ州には世界三大河川のミシシッピ川が流れている。ハックルベリーフィンの冒険を読んだことのあるかつての釣り少年なら覚えているだろうが、ハックが大ナマズについて語るシーンに胸を躍らせたことがあるのではないだろうか。もちろん私もその口で、いつかはハックが語っていたあの大ナマズを仕留めてやるんだと誓っていたものである。

 そして今こうしてハックやトムが駆け回った同じ中西部の大地に暮らすことになった以上、アングラーとしては、きっちりそれを仕留めなければならない時が来たというものなのだ・・・。

 シカゴに暮らすようになってから、はじめた趣味のひとつにカヤックがある。その手ごろなサイズとボートとは違った水と交わるような一体感が最高で、湖でも川でもこれを浮かべて数時間を過ごすのが夏の楽しみでもある。日本ではまだまだマイナーだが、そのカヤックを使ったカヤックフィッシングというのが特に私のお気に入りで、レーシングカーのコックピットのような小さな船体に必要最低限の釣具と飲み水などを詰め込んで、静かに湖面に繰り出す瞬間といったら。

 お陸っぱりからの釣りも楽しいのだが、やはり水上からいろんな場所へ繰り出せる自由度を手に入れた後の釣りの楽しみというのは、またまったく違った趣のものがある。特にアメリカでは地図上でここはと思った地形の場所には、大概の場合において個人の所有地となっていて、お陸っぱりからの釣りが禁止されていることが多いからなおさらである。そういう時に水上からであれば、誰にも文句を言われずスイスイと近づけてしまうのだから。

 もちろんカヤックというのは人力で進むものなので、風が吹くととたんに湖岸へ辿り着くのも大変というような事態に陥ることも間々あるのだが、それでも余りある楽しさがあるし、モーター付のボートとは違ってまるで忍者アメンボになったかのように静かに魚影に近づけるというメリットもある。


ナマズに湖面を引きずり回される

 ナマズ釣りといえば、血がしたたるチキンのレバーや、開封後に部屋にもって帰ると壁にまで臭いが染み付きそうなナマズ専用の練り餌、大ミミズなどをセットして、湖岸から遠投した竿を5本も立てて、魚がかかるまでのんびりビールでも飲んで待つというのが正しい中西部流というものである。ただ子供の頃からのルアーマンで、体に攻めの釣りが刻み込まれているせいか、餌をしかけてただひたすら魚がかかるのを待つというスタイルはあまり性に合っていない。

 今回は大ナマズを釣ることを想定してラインも15ポンドを愛用のアブ5001Cに装着し、メップスのゴールド5番スピナーを使用した。ナマズという魚は基本的に重くて、大きくて、そしてタフである。鯉もそうなのだが、底にある餌をパクパクとやっている大きな魚というのは得てしてこの手のスタミナ系の奴が多い。そういうわけなので、この巨大な魚に力負けしないように地元のナマズ釣り師たちは70ポンドクラスのラインを使う人も多い。ただ余りラインが太いと、ただでさえ手漕ぎでバランスをとったり進まなければならない小さなカヤック上では、キャストが非常に不愉快なものになる。できれば細めのラインで、うまくロッド捌きとカヤック操舵で交わしながら、葦周りや岩の陰などに逃げ込まれて糸を擦られないように駆け引きをするのがベストである。

 まだジェットスキーヤー達が湖面に繰り出してくる前の、朝の静けさが残る湖面にカヤックを漕ぎ出して数十分後、大ナマズとの格闘は意外にも早く訪れることになった。前日に深度まで詳細に書き込まれたマップを入手して目を付けていたポイントに到着し、キャストを静かに繰り返し出して5投目。「湖底の何かにひっかかったのかな」と思わせるような鈍くて重い感触が竿に伝わってくる。

 カヤック上では錨を降ろしているわけではないので、止まっているようでも実は微妙に風や水流によって流され続けているために小さなアタリというのはキャッチするのが非常に難しい。この場合も竿はググイッと引き込まれているのだが、いまいちこれが魚のアタリなのか、葦などに糸が絡んで柔らかくカヤックが流れに引っ張られているのかの判断が一瞬付きにくい。ただ、こういう鈍いアタリの時は底物の魚釣りでは要注意なのだ。この手のドシッとした感触の場合に大物がかかっている事が多いからである。

 何しろこちらは軽くて小さなカヤック、しかも両手を竿とリールのドラッグ調整に奪われているものだから、なまずが走るのに合わせてどんどん湖面を引きずられて行く。

 巻いては糸を出され、巻いては糸を出されを繰り返しながら、手元にまで何度か引き寄せるのだが、いかんせんカヤックが転覆しないようにバランスをとりながら手を魚に差し伸べると、またそのままカヤックが引きずられを20分も繰り返した後で、ようやくハックの駆け回った大地ですくすくと育った大ナマズがカヤックに釣り上げられることになった。

 そこで重みが十分に竿に伝わりきってから、ロッドが折れない程度にビシッと合わせを入れてみた。と、その合わせと同時にリールがギ・ギ・ギ・ギ・ギッ!と悲鳴を上げ、糸がドンドン引き出され始めた。こいつはでかいぞと思わせるに足るだけの感触がこの時点であったのだが、そこからが本当の格闘の始まりである。

 その様子を別のカヤックに乗って、「どこまで引きずられるのよ」と笑いながら眺めていた奥さんが、「このナマズを引き上げた瞬間カヤックもずっしり沈んでたわよ」と一言。そりゃそうだろう、カヤックというのは元々水面ぎりぎりで浮くものなんだから、それに30ポンドもの魚の重さが加わわりゃあねえ。(笑)


*釣り場は地元の人たちが大事に育ててきたものであり、また情報を提供していただいた方々にもご迷惑がかかりますので、釣りキチ三平スタイルで詳細な位置は示しません。
ご連絡はこちらまで「wanderphoto[at]live.com」



                                   
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