藤河さんのシカゴはクール



著者略歴 藤河信善

現住所:シカゴ(USA)
職業:分子生物学者/Ph.D(日本、アメリカ、ドイツの大学で研究歴)、映像作家、旅行家。
で、誰あんた?:医学部で働いたり、ラオスの山中を山岳民族と渡り歩いたりと、大志無く、ただ赴くままに生きているジプシー人生。


ユキノヒノシマウマ

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*釣りをしてみたいんだけど初めてで不安、釣りが好きなんだけ何処へ行けば大きな魚が釣れるのかわからない、トローリングに同乗して欲しい、アメリカ人ガイドでは英語が不安という方は、「wanderphoto[at]live.com」まで。



         中西部釣り紀行その17 (フロリダ マイアミ編)


常夏のマイアミでジギングに散る・・・


 ここマイアミを訪れるのはすでに10回目ほど。ただいつも仕事の合間が見つからず、なぜか今までこの街で釣りをしたということはこれまでに1回もなかったりする。そんなこれまでの釣り不満を一気に解消させてくれるほど釣りに連れ出してくれたのが、2008年度の全米学生バスフィッシングチャンピオンの北嶋君だ。彼はバスプロになる夢を抱いて海を渡り、慣れない文化や英語に苦しみながらも大学での学業と夢であるバスフィッシングを両立させ、日本人初となる全米レベルでの学生チャンピオンに輝いたという男だ。

 そんな彼がまず手始めに連れ出してくれたのが、50人は楽に乗れそうな大型のパーティーボートでのジギングだ。朝と昼の2回出航し、港から約1時間ほどの沖合いへ連れ出してくれる。ハリケーン通過の影響で水に濁りは入っていたというが、それでもさすがはマイアミである。空も青いが、海の色もまさにエメラルドブルー。岸から約1kmも走ったところで、海の色はラインを引いたようにコバルトブルーへと変わる。このラインの辺りで、海は一気に深場へと落ち込んでいるらしい。釣りのポイントとなるのはこの落ち込み周辺で、その近辺を周辺に浅場や深場を流してくれる。グルーパー、スナッパー、マケレル、ジャックの仲間が主なターゲットのようだが、時にはシャーク、セイルフィッシュ、マーリンも釣れるらしいのがさすが南国マイアミである。

 ボート上では餌となるベリーフーの一匹がけや切り身が目立つのだが、ルアーマンの北嶋君が用意してくれたタックルには大きな板状錘ルアーのジギングが備え付けられてあった。だがこのジギングという釣法、日本ではかなりメジャーな釣り方にも関わらず、貧乏学生時代が長く、今では海から遠く離れた土地に暮らす身にとっては実は初めての方法。初めての釣り場で初めての釣法・・・、ちょっとこれでは釣れるかどうか半信半疑だが、せっかく薦めてくれたやり方だ。それに経験者と一緒にやるのだからこの際いい経験にもなる。

 北嶋君の小気味良いジギングを観察しながら、見よう見まねでやってみるのだが、これが意外にリズム良くジグるのが難しいこと難しいこと。ジギングの層が深場なので、小1時間も続けていると、腕はパンパン、体は汗まみれという状態になってくる。さらに魚はかするどころかアタリすらまったく無いものだから、気分はまるで体育会系の強化合宿の様相すら醸し出してくる。「コノヤロー!」って感じで、それでも必死でシャクッていたら、水面からジグが思いっきり飛び出してきて危うく船上が戦場になるしまつ・・・。

 さっぱりの釣果の中、さすがにジギングばっかりじゃあ気分も体力も参ってしまうので、時々試してみたのが北嶋君も最近始めたというタイラバ。ディープフィッシングでのジギングがリズムに乗せた激しい体育会系な釣法なのに対して、こちらは沈めたジグをゆっくりとただ巻きすれば良いだけという遥かにゆったりとした釣法だ。これも私にとっては初めての釣法なのだが、日本では鯛釣りファンの間ではかなり流行しているのだという。ちなみにタイラバは、にんにくみたいな形をした錘にラバーのスカートがついているという小さな蛸みたいなルアーである。

 で、がんばって強化合宿のように汗をたっぷりかいた釣果であるが・・・。残念ながら、ハリケーン通過による濁りで船はほとんど沈黙し、都合3回も乗ってがんばったのだが1匹も魚を手にすることはできなかった。そういうわけで唯一、船上が賑わったのは、3回目の船が帰港中にトローリングで流していたグループに立て続けに5匹ほどスパニッシュ・マケレルがかかった瞬間くらいだろうか。いやあ、ジギングの特訓も疲れたが、自然相手だけにしょうがないといえばしょうがないが、エバーグレーズから続く渋い喰いにも少々参ってしまう。


マイアミでオーパ!

 フロリダくんだりまでやって来てさっぱり釣果の挙がらない姿を見かねたのか、北嶋君が誘ってくれたのがマイアミを迷路のように網羅する水路でのピーコック釣りだった。Florida Fish and Wildlife Conservation Commission (FWC)によって、1984年と1987年の2度に渡って約2万匹の稚魚が放流されたこのピーコックバスは、当初エバーグレーズの生態系を驚かすほどに急繁殖していたアフリカン・ティラピアなどの害魚駆逐のために導入された。だが、このピーコックバスが元々住んでいたアマゾンへ遠く出かけなくとも、気軽にアメリカ国内でその淡水魚最強とも言われる強力かつ無比なファイトを楽しめるということで、釣り人の間では密かに注目を集めつつある(現時点での米国内生息地は、フロリダとハワイのみ)。マイアミ市内からエバーグレーズ・ナショナルパークまで繋がるというこの広大な水路網は、どうやらフロリダバスはもちろんのことアマゾンから移植されてきたこのピーコックバスにとっても楽園らしい。ちなみにこのピーコックバス、通常ブラックバスと呼ばれて人気のあるラージマウスバスがサンフィッシュ科であるのに対して、シクリッド科という仲間に属する魚である。

 釣り師として知られた作家の開高 健の「オーパ!」にもトクナレの名で登場する憧れのピーコックバスを釣りに行きませんか?と誘われて断ったのでは釣りキチが廃るというものだ。もちろん即答でお願いしたのは言うまでもない。

北嶋君がピーコック釣りに通っているというボートラウンチは、近所で暮らす老人達がのんびりとチェスを楽しんでいるような、静かなアパート群の隙間にあるのどかな公園の脇にひっそりとあった。しかもこの水路、ボートランチも目立たなかったが、水路が走っているのはごく普通のマイアミ市民のまさに生活の場といった雰囲気がプンプン。 こんなところでバスボートを走らすという状況もなかなかオツなものであるが、北嶋君愛用のレンジャー461VS が疾走する背後にゴオ〜ンと爆音を響かせてジャンボが滑走するにいたっては、この状況でロッドを振るだけでも誘ってくれたかいがあったなというものである。開始早々、北嶋君のサスペンドミノーに小さなピーコックが反応。こりゃ今日は幸先良いかもと思ったのだが、自分のウィグルワートに小さなフロリダバスがかかって以降は、またまた例によってしばらくの沈黙が続く。「ぬぬ〜っ、今回のフロリダ釣行、こりゃ余程見放されてるな・・・。」と釣果は期待しないでこのシチュエーションを楽しむかと決め込みかけた頃、北嶋君が「あっ、あそこに大きなピーコックがいます!」と声を上げた。

 この水路での釣りに関しては、ほとんどサイトフィッシングに近いものがあるので、発見者イコール釣り上げる権利大有りなのだが、そこはガイドに徹してサービスしてくれている彼、私にその魚へのキャスティング権を渡してくれる。おまけに「これの方が効きますから。」と一押しのルアーを渡してくれた。

 ペアになってシャローを回遊しているピーコックの大きい方に狙いを定めてキャストを繰り返すのだが、さすがに大きい奴は賢いのかなかなか反応を示さない。10分くらいも水中に見えるその魚影を追い掛け回して、執拗にキャスティングを繰り返した後に、やっと反応!喰うというよりは、「こりゃ〜、ええかげんにせんかいっ!」って感じの怒りモード全開でのアタックをかけて来た魚のファイトは、まさに未知の強力さ。キングサーモンのように稲妻のように突っ走るわけではないが、その万力のようなトルクは、例えるならば淡水のシイラとでもいった感じだろうか。矢を放つ直前のギリギリの緊張感が溢れる弓のようにしなった竿先から伸びたラインの先で暴れる魚を抑えるために、ボート上を右から左へと走る。半ば強引に引き上げた魚は、今回のフロリダ釣行での苦行を吹き飛ばしてくれるような約50cm/4ポンドの魚体であった。魚が釣れずに溜まっていた鬱憤が一気に晴れたようで、魚を手にした瞬間は久々に手元がブルブルと震えるような感動が全身を覆った。

 その後、水路をさらに進み、自分も巣に居つくピーコックバスのカップルを発見。それを北嶋君に知らせて、さっきの借りをやっと返すことができたと一安心。だが、さすがはバスで磨いたテクニックを持つ彼は一味違う、私が先ほど散々苦労して釣り上げたピーコックをいとも簡単に仕留めてしまった。今は卒業後就いた仕事を覚えなければならないということもあって時間に追われているようだが、そろそろバストーナメントへの復帰も考えているという彼。いずれはFLWのAOY深江真一やバスマスター・クラシック優勝の大森 貴洋のように大活躍する日も近いだろう。


*釣り場は地元の人たちが大事に育ててきたものであり、また情報を提供していただいた方々にもご迷惑がかかりますので、釣りキチ三平スタイルで詳細な位置は示しません。
ご連絡はこちらまで「wanderphoto[at]live.com」



                                   
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