藤河さんのシカゴはクール



著者略歴 藤河信善

現住所:シカゴ(USA)
職業:分子生物学者/Ph.D(日本、アメリカ、ドイツの大学で研究歴)、映像作家、旅行家。
で、誰あんた?:医学部で働いたり、ラオスの山中を山岳民族と渡り歩いたりと、大志無く、ただ赴くままに生きているジプシー人生。


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*釣りをしてみたいんだけど初めてで不安、釣りが好きなんだけ何処へ行けば大きな魚が釣れるのかわからない、トローリングに同乗して欲しい、アメリカ人ガイドでは英語が不安という方は、「wanderphoto[at]live.com」まで。



           中西部釣り紀行その15 (オレゴン編)


パイオニアの地でサーモン&トラウトフィッシング


 ルイス&クラーク探検隊をご存知だろうか?アメリカでは子供の頃から繰り返し習わされる、アメリカ人隊としては初めて陸路で西海岸に到着した探検隊のことである。アメリカ合衆国第3代大統領のトーマス・ジェファーソンの命によって結成されたこの探検隊は、その当時の合衆国最西端である中西部のセントルイスから、ロッキー山脈に源を発しミシシッピー河に繋がるミズーリ河を遡り、コロラド川やコロンビア河を下りながら、オレゴンの地に達したのだ。

 もちろん当時の白人たちにとっては、まったくの前人未到の地に等しく、ルートに関する詳細な情報がないことはもちろんのこと、熊やピューマ、敵対するインディアンたちなど、行程には数々の困難が伴うことになった。そういうわけでオレゴンには彼らルイス&クラーク縁の地が点在しているとともに、パイオニア精神が息づいている活動的なアウトドアファン天国としても知られている。例えばスポーツグッズのコロンビア、ナイキなども本拠地はオレゴンに位置している。

 山あり海あり川あり、そして旨い海の幸・山の幸に温泉ありと、私も老後はこんな所でアクティブ爺になって暮らしたいななどと思うことすらあるオレゴンはまた釣り人天国でもある。特にサーモンやトラウトフィッシングが好きな人にとっては、それこそアラスカ・モンタナに次ぐような米国有数の釣り人天国なのだ。以前にこのコラムでもお伝えした中西部に暮らすスチールヘッド(降海型レインボートラウト)のスカマニアは、ポートランドから程近いコロンビア河に注ぐ支流が点在するスカマニア地域(ワシントン州側)から移植されたトラウトである。またコロンビア河の河口には、キングサーモンのニックネームである「シヌーク」の元になったのインディアン達が暮らしていたシヌーク村もある。そういうわけで、オレゴンの州魚は今でもキングサーモンと定められている。

 そんなサーモン、トラウトの天国で撮影仕事の合間を縫って可能な限り竿を振り、移植種ではない原種のキングサーモンやレインボートラウトを狙ってきた。

コロンビアリバーのキングサーモン

 中西部を流れるミシシッピー河やミズーリ河が泥で濁ったマッディーリバーであるのに対して、雪解け水を豊富に抱えたほ北西部の大地を流れるこのアメリカ第3の河川コロンビア河は、手を浸せば凍りつきそうな冷たい水とどこまでも透き通ったジンクリアーな水が特徴である。また両岸を絶景に囲まれたこの河は、年中雪の冠を被ったフッドマウンテンから吹き降ろす強風を生かしたウィンドサーフィンのメッカとしても知られている。

 そんな美しい大河コロンビア河だが、ハンフォード・サイトから流れ出る放射能汚染や、長年の乱獲によるダメージなどもあって、ここに毎年遡るキングサーモンの数は減少の一途を辿るばかりだというくらいニュースが耳に入ることも多い。だがDNRや地元のボランティア達の努力により、フィッシュハッチリーで放流される稚魚や、産卵のために河を遡るサーモン達のために造られたフィッシュラダーの整備などにより、少しづつではあるがここに帰ってくるサーモンの数も戻りつつある。実際に私が竿を振ったポイントでも、支流を遡るキングサーモンの雄姿がそれなりに見ることができた。また近くに位置する巨大なダムのフィッシュラダーでは、それこそ数え切れないほどのキングサーモンやスチールヘッド達が見れた。

 強風が吹き荒れる巨大な河へ向かって、ボートからではなく陸っぱりからルアーをキャストする時の気持ちといったら、大自然に挑む人間の小ささを改めて実感させてくれるものだ。小1時間竿を振ったがまったくアタリすらない、周りの釣り人にも一切アタリはないようだ。だが、近くを流れる支流にはキングサーモンの姿が見受けられるので、自分がキャスティングを繰り返している水中にもきっとキングサーモンは何度も通過しているはずだ。強風で凍えそうになりながらも、そう信じてひたすらキャストを繰り返すしかないのが、キャスティングできる足場も限られた陸っぱりアングラーの悲しい性だ。

 もちろんこのまま1日中竿を振れればよいのだが、撮影のことやこの後の旅程のこともあって、残された時間は実質後30分といったところになり、気持ちは徐々に「まあ、そう簡単にキングが釣れるわけはないか・・・」という諦めの雲が支配しだす。それでもこのコロンビア河へキャスティングできる幸せに満足しながら、ひたすら1オンススプーンの遠投を繰り返していた時にキングサーモン特有の強烈なガツーンというアタリがきた。アタリがきたからといっても、取り込みにいたれるという保障はまったくない。「時間的にもこの1匹を逃せば後はないだろう・・・」。気持ちは焦るが、焦ったところでどうなることでもない。バシッと強くダブルフッキングをかませ、河の強い流れに乗ったキングの突込みをぐっとロッドを握って耐える。何度か巻き取りや突っ込みを繰り返しながら、取り込んだ魚は絶対20〜30ポンドはあると思っていた予想に反して14ポンドの魚体であった。もちろんこれはミシガン湖であれば悪いサイズではない、だが太平洋育ちのキングサーモンとしてはそれほど大きいわけではない。何しろイリノイ州記録が37ポンドなのに対して、ここでは大きいものは100ポンドにも育つのだから・・・。

 ネットを持っていない旅人の自分の取り込みを手伝い、食味が落ちないようにささっと手馴れた手つきで血抜き作業を同時に済ませてくれた男性の友人は、その数分後には30ポンドオーバーのキングサーモンを釣り上げた。ここで自分は時間切れとなってしまったが、その男性達によると前日にはこの近くで67ポンドのキングサーモンも上がったという。「67ポンドのキングサーモンってどんな魚なんだ!?」。

自己記録を遥かに凌ぐそのサイズのキングサーモンがかかっても、どちらにせよこの旅に持ってきてる4ピースのトラベルロッドでは、とてもじゃないが釣り上げることはできなさそうだが・・・。

ここでしか釣れないブルトラウトは味も最高

 西海岸の冷水域に生息するブルトラウトは、日本で暮らす岩魚に近い魚でグリーンの魚体にピンクのジュエルが輝く渓流の宝石と呼ばれるトラウトだ。このエリアでしかワイルドトラウトは釣れないことと、その獰猛な性格を知っている人たちには最高のターゲットとされている。

 撮影の合間に通りがかった渓流や湖を見つけては、短時間のキャスティングを繰り返したのだが、残念ながらまったくその魚体を目にする機会のないままに数日が過ぎた。だが渓流域に暮らすトラウト達は、穴場と出会い、適切な時間帯に当たればそれまでの沈黙が嘘のように入れ食いになったりするものだ。

 今回の旅でもあるレークでキャンプを張った際に、まだ日の昇りきらないうちに朝靄の湖面へ小さなスピナーをキャスティングした時、そのボナンザはやってきた。こんなに簡単に釣れてしまってよいのだろうかというくらいの入れ食いで、わずか1時間で15匹は釣り上げてしまった。その中の1匹はキープしてその夜の夕食になったのだが、その繊細でスムースな身は最高の旅の味となった。(エリアによっては保護のために、ブルトラウトはキープ禁止されている場合が多いので注意。)

 また西海岸育ちのトラウトといえばレインボートラウトが世界的も有名だが、もちろんこのオレゴンにもワイルド・レインボートラウトはたくさん暮らしている。このレインボーについても同じくボナンザに出会うことができ、ある人里はなれた渓流で竿を振った際になんと1時間ちょっとで20匹以上ものまさにワンキャスト・ワンバイト状態。サイズは10cm〜30cmと大半がリリースサイズばかりだったが、流れが速く澄み切った渓流ではこういうトラウトでも十分に楽しむことができるのが、豪快な海釣りと違ってトラウトフィッシングの素晴らしいところだ。

 オレゴン、私が暮らすシカゴからは日本へ帰るのと変わらないほどに時間がかかる遠く離れた場所だが、サーモン・トラウトフィッシング、マウントフッドやサザンコーストなどの豪快な自然景観、安くて新鮮なフルーツや酪農製品、牡蠣やダンジネスクラブなど、釣り人はもちろんのこと、それ以外の人にとっても非常に魅力的な土地だ。特に山や海から遠く離れた中西部で暮らす日本人にとっては、故郷を思い出させるような土地ですらある。


*釣り場は地元の人たちが大事に育ててきたものであり、また情報を提供していただいた方々にもご迷惑がかかりますので、釣りキチ三平スタイルで詳細な位置は示しません。
ご連絡はこちらまで「wanderphoto[at]live.com」



                                   
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