SHOKOのシカゴ郊外の町から


著者略歴 長野尚子

イリノイ州在住フリーライター。
2001年、大手出版社の制作ディレクターを退職後、単身アメリカへ留学。
その後帰国し子育て関連誌の編集者を経て、結婚を機に 2006年3月より再びカリフォルニア州バークレー市へ。
主に教育、国際文化交流、音楽をテーマに人脈を広げながら執筆活動中。
2007年10月より、研究者である夫の仕事の関係でシカゴ郊外に移る。
趣味・特技はJazz(ピアノ&ヴォーカル)、剣道(四段)。好きなことは食べることと飲むこと。ライブBarめぐり。
バークレーでの3年間の留学生活を綴った「たのもう、アメリカ。」(近代文芸社)発売中。


バックナンバー
            オバマ大統領再選を支えたブルース・ディーヴァたち
          “Chicago Blues Mamas For Obama”

        

(*ENGLISH)

 11月6日午後11時14分。オバマ大統領再選の速報が流れると、シカゴは興奮と安堵に包まれた。 季節外れの暖かさだった4年前のあの日とはちがって、この日のシカゴは冷たい雨がしとしとと降り続く寒い一日だった。(4年前の記事:「オバマ新大統領誕生に沸く、“地元”シカゴ」) 直前予想では、95%オバマ大統領の勝利が伝えられていた(FOXニュースを除く)ことや天候の影響もあってか、この夜のシカゴ市内は前回のような人出もなく、オバマ支援者たちは比較的リラックスしてめいめいの場所でこの選挙戦の行方を熱く見守っていたようだった。

 シカゴのブルース・ディーヴァ(歌姫)ら10人で結成された、“Chicago Blues Mamas for Obama”(シカゴ・ブルース・ママズ・フォー・オバマ)もそのひとつ。選挙戦の間、精力的に支援活動を行ってきた強烈な“オバマ応援隊”だ。彼女たちの最後の仕上げともいえる「選挙開票兼同時ライブ」が、シカゴ北部のライブBar“Myne Stage”で行われると聞き、私はオバマ大統領の2期目を祝う夜をここで共に過ごすことにした。
 
Chicago Blues Mamas for Obama”
Katherine Davis
Deitra Farr
Shirley Johnson
Shirley King
Sharon Lewis
Liz Mandeville
Ellen Miller
Peaches Staten
Holle 'Thee' Maxwell
Nellie “Tiger” Travis
  Copyright 2012 Rob Benetti Photography"         

 午後8時、Barの扉を開けると中は想像以上にリラックスムード。店内数か所のテレビスクリーンでは開票番組が流れ、お客はお気に入りのショットを飲みながら食い入るように画面を見つめている。勇んで奥のイベント会場に入ると、人はまだまばらで拍子抜けするほど静かだ。どこにいってももみくちゃになった4年前とは様子がかなり違う。
 
 テーブルにはアメリカ国旗の小旗。ステージ横では赤の衣装に身を包んだ出演者たちがテンション高く盛りあがり、奥のスクリーンにはCNNの開票ニュースが映し出され、元NFLのマイク・ジェニングスが随時速報を伝えていた。司会進行役は、“ブルースの女王”故ココ・テイラーの娘、クッキー・テイラー。シカゴを代表する8人のディーヴァたちが次々と紹介され、オバマ再選の“その時”に向かって熱唱を繰り広げていった。

  
(左)元NFLのマイク・ジェニングスが開票速報で盛り上げる (右) (左から)Nellie “Tiger” Travis, Peaches Staten, Melvin Smith(Bs)

 なんというタイミングだろう。5人目のShirley King(B.B.Kingの娘)が“We’re Gonna Win This Thing (勝利は我らに)”を歌い終わったちょうどその時だった。オバマ大統領の再選が伝えられ、場内はたちまち興奮のるつぼに。ステージ上にディーヴァたちが駆け寄って抱き合い、涙、涙。「For More Years!」のコールが割れんばかりに鳴り響く。この瞬間、彼女たちの長い選挙戦は最高の形で幕を閉じた。
 
 歓喜の雄叫びが続くなか、このイベントを企画した“Chicago Blues Mamas for Obama”のソーシャル・メディア・ディレクター、アビー・スパークス氏のもとにオバマ大統領から直々にお礼メールが届き読み上げられた。
 
 “私はこのコンサートを、全世界のみならずワシントンでの就任式へ連れて行くことを楽しみにしています。彼女たちは世界のステージでブルースを歌い、私たちの“スィート・ホーム”、シカゴ・ブルースを世界中の観客に伝えてきてくれました。この歴史的な勝利の夜に、彼女たちがステージに一同に会してくれたことを光栄に思います”
 
(左)Holle 'Thee' Maxwell, William Lovell Lillard, Shirley King    (右)“The Search is Over”を熱唱するDeitra Farr

 そして最後は、会場が一体となっての“Sweet Home Chicago”の大合唱で締めくくられた。今年2月にホワイトハウス内で行われたブルース・セッションでオバマ大統領も口ずさんで話題となった、シカゴ・ブルースの“賛歌”、そして今や“オバマ応援歌”だ。

   "Come on, baby don't you want to go
    Back to that same old place
    Sweet home Chicago"


◆ ◆
 午前0時半。興奮を胸に家路に向かう車の中で、オバマ大統領の再選スピーチがラジオから聞こえてきた。


 “Tonight, in this election, you, the American people, reminded us that while our road has been hard, while our journey has been long, we have picked ourselves up, we have fought our way back, and we know in our hearts that for the United States of America, the best is yet to come.” 
(今宵、この選挙で、アメリカの人々があらためて思い起こさせてくれました。私たちの旅路はつらく長いけれど、私たちは立ち上がり巻き返すために戦ってきたことを。そしてアメリカ合衆国にとって最高のときはこれからだということを。)

 “America, I believe we can build on the progress we’ve made and continue to fight for new jobs and new opportunities and new security for the middle class. I believe we can keep the promise of our founding, the idea that if you’re willing to work hard, it doesn’t matter who you are or where you come from or what you look like or where you love. It doesn’t matter whether you’re black or white or Hispanic or Asian or Native American or young or old or rich or poor, abled, disabled, gay or straight. You can make it here in America if you’re willing to try.”
 (私は信じています。これまでの成果をもとにさらに前進できると。中間層のための新しい仕事や新しい雇用機会、新しい安心を作り出すためさらに戦い続けることができると。建国の約束を守ることができると。一生懸命働こうという思いさえあえば、何者だろうとどこから来た者だろうと、外見がどうだろうがどこを愛していようが関係ない。黒人だろうが白人だろうが、ヒスパニックだろうがアジア系だろうがアメリカ先住民だろうが、若くても年寄りでも金持ちでも貧乏でも、障害があってもなくても、ゲイでもストレートでも構わない。やる気さえあれば、ここアメリカではなしとげられるのだと。)

 「アメリカをアメリカならしめているのは、比類なき多様性。それをひとつにつなぐ絆や、人々がひとつの運命を共有しているのだという信念のおかげだ」-- アメリカはいったいどんな国なのか。どこへ向かおうとしているのか。何故に世界から人が集まって来るのか。ここで暮らしながらもはっきりとした理由がつかめないでいた異国人の私に、この夜オバマ氏のこの言葉はずっしりと響いた。

      “For the United States of America, the best is yet to come.”
       (アメリカよ。最高のときはこれからだ!

 

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