Kuni のウィンディ・シティへの手紙



著者略歴 馬場邦子

アメリカの通信社東京支局、及びシカゴ支局で金融をカバー。サンノゼ・マー キュリー・ニュースの 東京支局長アシスタントを経て、フリーに。主にジャパン・タイムズにアート・ レビューを執筆。
2002年より、シカゴ郊外アーリントンハイツに住み、2008年日本に帰国。
公立小学校英会話講師。


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     夏の中高校生たちの白熱討論の場「第11回子ども国会」東京で開催!
                 〜僕らの明日の話をしよう〜



 夏休みの中高校生の討論の場「子ども国会」が2014年の夏も東京で開催された。「僕らの明日の話をしよう」というテーマのもと、8月13日と14日の2日間、全国から17人の議論好きの中高生たちが国立オリンピック記念青少年総合センターに集まった。この中高生のイベント(小学生も参加可)は、教育、環境、国際などの社会における諸問題を各分科会に分かれて、1泊2日かけて徹底的に討論する。そして、その結論を宣言書としてまとめ、参加者は子ども議員としてその宣言書を採択し、後日社会に提言していく。「子どもたちへこれからの社会と向き合うきっかけを提供する」という理念に基づいているこの夏の恒例イベントは、2004年に始まり、今年で11回目を迎えた。

 この「子ども国会」の活動は、政治家や各省庁の人々からも熱い視線が送られている。毎年開催にあたって、政治家から激励のメッセージが届く。今年の資料には、小泉進次郎議員、文部科学大臣下村博文議員、保坂展人世田谷区長、蓮舫議員、小池百合子議員、中山泰秀議員、福島みずほ議員、小川勝也議員たち11人の政治家からの熱いメッセージが掲載されている。去年は小泉進次郎議員が開会式にかけつけ、参加する子どもたちに応援メッセージをおくったほどで、その模様はテレビの報道番組の取材で特集され、ニュースにも流れ、一般の人々にもじょじょに認知度が高まっている。

 学校で部活と勉強の両立で忙しく、なかなかこういう機会が持てない中高校生たちにとって、異年齢の中高生の意見を聴いたり、サポートしてくれる高校生、大学生や社会人からのアドバイスを受けたりするのは刺激的で、長時間の討論にもかかわらず、どの参加者も目をキラキラ輝かせて、思う存分自分の思いや意見をぶつけ合う喜びに満ち溢れていた。
 
 今年の分科会は、「学校をつくろう!(理想の高校とは?)」「日本の医療問題」「日本の貧困」「グローバル化ってどういうこと?どうなるの?」「僕らの思う不登校児とは?」の5つで、各分科会に1人のファシリテーターが話を進め、3〜4人の高校生や大学生、社会人のサポーターが、参加者が意見を言いやすいように導いていく。 ファシリテーターやサポーターは、「子ども国会」の運営母体である「子ども国会実行委員会」のメンバーが主に務める。

ファシリテーター5人

 「子ども国会実行委員会」代表の野田雅満君(早稲田大学2年)の力強い開会式の挨拶の後、各分科会で「アイスブレイキング」と呼ばれるリラックスタイムで、初めて顔を合わせた参加者の緊張をほぐしていく。クエスチョンカードを掲げて、1人1人自己紹介しながら、好きな物などの質問に答える。
 それまで緊張でこわばっていた顔に笑顔がでてきて、じょじょに参加者が意見をいいやすい討論という雰囲気へ持っていく。30分ぐらいたって、次々に討論が始まる。最初にテーマに基づいたイメージのキーワードを各自付せんに書いてどんどん貼っていく。

 じっくりアイスブレイキングに時間をかけた「学校をつくろう!」グループは、「学校を作るときに何が必要か書こう!」とファシリテーターの森田聡さん(社会人、「子ども国会実行委員会」元代表)の呼びかけで、一斉に7人の中学生がキーワードを書きだす。

整然と整理された「日本の医療問題」分科会の付せん
 キーワードを書いた後は、問題をグループごとに分類していき、その問題を対処するにはどうしたらいいのかを話し合う。「子ども国会」実行委員の西山京佑君(早稲田大学本庄高等学院3年)によると、「この作業で漠然とした問題が具体化し、理解が深まり、自分の中でわからなかった問題意識を発見することができていい。それまでやっていた議論というのは、意見のある人にみんなが従っていくという感じだったが、これだと1人1人話す機会も与えられ、みんなで一つの結論を作り上げていくという感じ」

 「日本の貧困」分科会は、最初に日本と海外の貧困を比べて、問題点をだしている。子ども国会実行委員桑田実結さん(日本女子大学附属高等学校1年)は、初めてのファシリテーターとは思えないほど、落ち着いて参加者の意見を引き出している。
 「グローバル化」分科会はすごい数の付せんが模造紙いっぱいに貼られている。そして、いつの間にか別の机にいくつかの付せんが移動されている。グループに分けられた付せんを図式化している分科会もあり、それでみんなの意見がじょじょに整理されていくのだろう。


 「学校をつくろう!」分科会の女子6人と男子1人の中学生の参加者同志で活発な議論が展開されている。お互いの意見を真剣に受け止めながら、ビシッと相手の胸に響くような意見も返している印象。いつの間にか、ファシリテーターの森田さんは、輪の外にでて彼らの様子をじっと見ている。それまでサポーターの人たちもヒントなどを出して参加者が意見を言いやすいように工夫していたが、ここまでくるとしめたもの?!学校の理念や方針などは、各自意見を書いた付せんを貼り、みんなで同時に指さして多数決で決まった。
これが「学校をつくろう!」分科会の決め方!

 このみんなの意見をうまく引き出す責任重大なファシリテーターの仕事は、どうやって鍛えられるのだろう。野田君の話では、すべての準備に数か月もかけるのだが、夏休みに入ってから実行委員で分科会の模擬討論を10回ぐらいやったという。各担当分科会のファシリテーターとして討論し、別の分科会では参加者の立場として討論を徹底的に練習し、「こんな意見がでるのではないか」「こうまとめられるのではないか」とさまざまな意見を想定して備えるという。お互い「今の進め方はどう?」「気配りは?」と言動、挙動、所作法などを磨き上げていくという。

 3月に実行委員として入り、模擬討論も回数をこなし、今回初めてファシリテーターを経験した横山雄紀君(城西大2年)は、「今まで大学でやりたいことが見つからなかったけど、(「子ども国会」実行委員をやって)これだ!と。練習だけしていた運動部とは全然違い、責任が伴うし、自分で考えていくことが身につきつつある」と興奮した面持ちで語る。実行委員になってまだ数か月なのに、「子ども国会」の活動のおかげで、寡黙だった横山君が大学の討論の場でも教授にほめられるほどコミュニケーション力が身についてきたという。

 2日間の討論は、食事や休憩をはさんでのべ8時間以上。よくまあこんなに継続的に集中議論できるのかと思うが、子どもたちは終始真剣さを失わない。1日目の夜、意見をまとめて結論を宣言書として手書きで書く。

 2日目は、参議院会館に移動し、まとめられた手書きの宣言書が印刷され、各自に配られ、分科会ごとに宣言書に基づいて発表し合う。「学校をつくろう!」分科会は、自分たちが考えた学校の理念・教育方針を発表。私立学校の現状・問題点も指摘し、生徒、先生、文部科学省、私立学校への提案も述べた。
「学校をつくろう!」分科会発表

 「不登校」分科会は、個人(自分自身)に対する問題、対人に対する問題、環境に対する問題と分けて考え、対人のいじめ問題は、いじめる側といじめられる側の要因と対策を発表し、自分たちでやっていくことや先生にお願いする具体策などを提案した。「グローバル化」分科会は、グローバル化で起こるメリット・デメリットをあげ、グローバル化に伴い起こる問題点を具体的に指摘し、グローバル化に必要なものを上げ、最後それぞれのグローバル化への決意を発表した。


「日本の医療問題」分科会発表
 「日本の貧困」分科会は、まず発展途上国と日本の貧困の差を発表し、日本の様々な現状、母子家庭、父子家庭、中卒、高卒の人々の現状などを上げ、それに向けての支援などを発表した。「日本の医療問題」分科会は、医療と開度の連携・協力として具体的な対策と、病院までの距離が遠い高齢患者の現状とその改善手段を具体的に発表した。

 その後、参議院会館別館に移動し、「特別体験プログラム会場」で採択をする。子ども国会本会議場として、各分科会参加者が子ども議員として正式な宣言書の案として承認。<2日目写真54使用>本場の参議院会場のように緊張感あふれる厳粛な雰囲気の中、子ども議員たちは堂々と発表する。本会議でも女子中学生の子ども議員が議長となり、各自がボタンを押して、賛成多数で第11回子ども国会宣言書案は可決された。


 最後は、再び参議院会館に移動し、全体交流。お互いみんな打ち解けて、ほっとした表情で写真におさまっていた。その後、野田君から参加者1人1人に終了証書が渡され、名残惜しむ中での解散となった。

 参加者に感想を尋ねてみた。「普段の学校生活では討論しないので新鮮!5時間(以上)も討論したのは初めて!メンバーとの交流も楽しくて、時間がたつのがすごく早く、有意義に感じた」と本会議の議長も務めた樋口れみさん(茅ヶ崎市立松浪中学2年)はうれしそうに言う。「サポーターの人たちからアドバイスをもらい、遅くまで討論し、こんなに時間をかけて一つの案を完成していったのは初めて。自分の意見をわかってもらえることで、わかりやすく伝える技術が身についた。今後このことを学校に発信していきたい!」と積極的な大和祐菜さん(茅ヶ崎市立松浪中学2年)。「この経験を生かして学校の勉強に役立て、社会にも還元していくことで自分のためになる」と佐藤彩夏さん(さいたま市立馬宮中学1年)。3人ともまた来年も「子ども国会」に参加し、高校から実行委員もやってみたいと言う。

    

 岩手県の大船渡市からきた政治に強い関心を持つ千葉裕二君(大船渡市立第1中学1年)は、「これからもずっと(「子ども国会」に)来たいと思った。みんなで協力して一つのことを作り上げるのが楽しかった。時々難しいことがわからなかったけど、(他の参加者が)すごい意見を言うのに憧れるし、自分もそうなりたい」と話した。

 高橋美樹さん(日本女子大学附属高等学校1年)は、「医療問題というテーマに対して、とても長い時間をかけて真剣に考えたことで医療への興味が生まれたと思います。皆で考えを深めて、意見を出し合う楽しさを改めて感じました。少し子ども国会実行委員にも興味があるので、部活や習いごとのことも考えながら決めていこうかな」と語る。

 今後は採択された宣言書を国会議員や関係省庁に渡して、子ども議員や実行委員たちとの「意見交換会」が行われる。「これは子ども国会の大切な要素なので、ぜひ注目していただければ!」と野田君は強調する。2009年の小沢一郎幹事長、原口一博総務大臣たちとの意見交換会では、以前の「子ども国会」の提言が実現したと報告があった。子どもたちの意見が社会を少しでも変える力となる。

 「子ども国会」は夏の本会以外に、春と冬に気軽に参加できる日帰りの小討論会を開催している。こちらは社会問題だけでなく、身近な話題をテーマに討論を行うので、いきなり社会問題を討論しづらい子どもたちは、まずこちらに参加してみたらどうだろう。

 なお、10年間の子ども国会の歩みを冊子にするプロジェクトもあり、インターネット上のクラウドファンディングサービス「READYFOR」を利用して、その資金も一般の人々から募り、目標額以上の資金が集まった。https://readyfor.jp/projects/kkbook 

 副代表の馬場裕也君(早稲田大学2年)は、「子ども国会」が途切れることなく11回も続いている理由について、毎回運営のノウハウやテクニックがきちんと引き継がれていることが大きいと言う。「近年数多くの学生団体が乱立し、新興の団体が増える中、10年間途切れることなく、子ども国会という団体(イベント)が続いてきた最大の要因はここにある。現役の高校生や大学生が自分自身の持つ能力以上の成果をあげるためには、こうした過去の集積や10年間の人脈を活用していくことが不可欠である」と馬場君は語る。

     
     
子ども国会実行委員13人とサポーターたち、ご苦労さま!

 「OB、OGのみんなが応援して手伝ってくれるのも子ども国会ならでは。テクニックも勿論だが、子ども国会に対する思いも継承していくことが大事だと思う」と高校から4年間実行委員で一緒に馬場君と共に活動してきた代表の野田君もきっぱりと言う。

 今回の「子ども国会」の感想を野田君に尋ねると、「いろんな方への感謝を感じることが多かったと思う。一番は一生懸命議論してくれた参加者へ、協力してくれたサポーターといろんな方々へ。これからも子ども国会が続くように願っている。参加した中高生の多くが実行委員になりたいと言ってくれたので、今後子ども国会を好きになってくれて、支えてもらえたらと思う」と笑顔で力強く語った。



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