シカゴ日本人学校全日校だより

             シカゴ日本人学校全日校中学部「ソーラン」を舞う


エネルギッシュで迫力のソーラン。
 今年もシカゴ日本人学校全日校中学部の生徒たちが、ここシカゴの地で、日本の伝統を華麗に舞った。それは、まさに、「双葉」の名にふさわしい、子供たちの誇り高い舞いであった。

 6月23日、アーリントン・ハイツのフォレスト・ビュー・エジュケーショナル・センターで行われたジャパンフェスティバルの1日目。4人の生徒たちによる勇ましい和太鼓の呼び音を合図に、赤と黒で構成した基調の布に、背中に美しい紐模様を施した真新しい半纏を身にまとい、赤い鉢巻をきりりと巻いた38人の中学生たちが、毅然とフィールド・ハウス・ステージに降り立った。

 一曲目は、鳴子という楽器を使いながら、高知県の有名なよさこい踊りをシカゴ風にアレンジした「ソーラン」を踊る。全員しゃがんで下をむくポーズから始まり、三味線の音が高まるにつれ、両手で鳴子を突き上げ、両手足を広げ、かがんだ状態で片手を左右にゆっくり回す。観客を見据えたかのような全員のぴしっとした動きに、こちらもゾクッとくる瞬間だ。この鳴子を使った「ソーラン」は、全員が同じ動きをするので、自分の子供の動きを集中して見られた。

 うちの息子は、中学1年生なので、今回が「ソーラン」デビューである。小学2年生のときに、文化祭で初めて中学部が踊る「ソーラン」を見て以来、その力強い動きに魅せられ、いつか「ソーラン」をシカゴで踊るのが息子の目標になり、親子でその日をずっと待っていた。

 4月の下旬から練習がじょじょに始まり、6月は、運動会の後、英検や定期テストが行われる中、昼休みをも使って、「ソーラン」の練習は集中的に行われた。6月の初め、その練習を見学しにいったのだが、大体育館をいっぱいに使っての一斉練習は迫力があった。DVDを見ながら、細かい動きをチェックし、繰り返し覚える。5人の中学3年生がリーダーとなり、5つのグループに分かれて、中学1年生に懇切丁寧に熱心に教えていた。

 「中2や中3もまだ、手を開くのか閉じるのかとか、このときの足はどんな風になるのか、などの細かい所は全員が完璧というわけではないですが、中1と一緒に確認していき、より完璧なソーランが踊れるようになってきたと思います。」と5月30日付けの生徒会広報「絆」に書いてある。

 中学部長の山田先生の話によると、3年前、今の中学3年生が中学1年生の時、ジャパンフェスティバルに参加するようになってから、先輩が後輩に受け継いでいくという部活のような形になったという。先生方は見守りながら、DVDを基本に生徒たち自身で踊りをアレンジしていき、生徒だけで作り上げていくという。この日、まだ踊りを覚えていない中学1年生も懸命に先輩たちについていっていた。
 学校でのハードな勉強及び運動、学校以外の文化、スポーツ活動、そしてこの「ソーラン」をこなすには、すべてに情熱を持って、かなりの集中力を持たないと両立できない。しかし、何に対しても前向きに取り組む姿勢ができているこの学校の生徒たちは、ジャパンフェスティバルの晴れの舞台で、見事に、一糸も乱れることなく、複雑な動きをする「ソーラン」を踊りきっていた。今まで何回も中学部の生徒たちが「ソーラン」を踊るのを見るたびに、感嘆の声を上げてきたが、ついに自分の子供が初めて「ソーラン」を踊ったという感激で、私は目頭が熱くなった。他の保護者たちも同じ気持ちだったに違いない。
 2曲目の前、4人の中学3年男子が練習を重ねた太鼓のパフォーマン スで、気合を入れる。

一曲目が終わると、「そーれ!」という掛け声と共に、4人の生徒たちによるぴったり息の合った和太鼓の力強いパフォーマンスが会場にこだました。

 そして、いよいよ二曲目は、お馴染みの民謡歌手伊藤多喜雄が歌うロック調の「北海道ソーラン」。「大漁の忙しさを声や動きで表現し、昨年JCCCよりはっぴも新調していただき、気持ちも新たに日本の粋を表現したいと思います。荒削りかもしれませんが、最後までせいいっぱい踊ります。」とみんなが挑む気持ちを中学2年生の男子が説明した。

  曲が始まる前は、みんな後ろを向いて、後ろ手を組み、「構え!」の掛け声で、いっせいに前を向き、右手を突き出し、開脚の体制。この苦しい体制で待つ行為に慣れるまで、ある程度の訓練の期間がいるという。曲が始まって、その手を回しながら、細やかな波の動きを表現する。その手の動きがダイナミックになり、荒波を彷彿する。

 運動会で綱引きを引くような体の体制で片足をまっすぐ伸ばして、力を込めて腰をぐっと落とす動きが、目を引く。これは、北海道の漁師たちが、日本海の荒波の中、ニシンの網を引く姿を表現しているのだろう。生徒たちはいとも簡単に何回も繰り返すが、実際やってみると足を落とすだけで苦しい。みんながこのような難しい動きをしっかりきめたときに、美しくエネルギッシュな「ソーラン」が生まれる。

 後半は、列によって、違う動きをすることで、全体で大きな波を打つような躍動感もあふれる。まさに圧巻。中学3年生のベテランの生徒たちがおりなす体に染み込んだ動きは、自然な流れがあってまさに「舞っている」という表現がぴったりだ。背丈のある美しい少年、少女たちが、このような男まさりの力強い踊りで1年生を引っ張っていく。1年生は、まだときどきぎこちない部分もあるが、見事についていっていた。


フィニッシュの富士山の形。
全員の気持ちがそろって、見事に決まる !
 最後は、全員が舞台の中央に集まっていき、後ろの真ん中で、騎馬戦の形で、1人の中学3年生の男子を担ぎ上げ、全員で彼をトップにした3角形の形を表現する。富士山をイメージした見事なフィニッシュだ。華々しい大漁のイメージも浮かんでくる。

 1990年代初め、荒れた学校を再生するべく、北海道の稚内南中学で発祥した「南中ソーラン」は、月日を経て、日本全国あちこちの学校の運動会などで踊られるようになった。7年前、横浜の中学からシカゴ日本人学校へ赴任した中学部の1人の先生が、日本人学校にこの「ソーラン」を紹介した。

 その「ソーラン」が7年という歳月の間、伝統を引き継いでいくという使命に燃えた先生と生徒たちの努力によってあたためられ、ここシカゴの地で見事に花開いた。これからも、この誰をもとりこにする「ソーラン」という伝統がシカゴ日本人学校の生徒たちの間でずっと受け継がれていくことを願っている。


ソーラン初体験の中学1年生。無事に終わり、充実感で笑みがこぼれる。

記事・写真:馬場邦子

                                             
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