シカゴ音楽三昧記
ジャズ、ブルース、ロック、R&B、クラシック、ミュージカル、オペラ・・・シカゴはさまざまな音楽の宝庫。この新連載では、音楽なしでは生きていけない編集長自らが日々体験したシカゴでの音楽ライブを、逐次レポートしていきます。どうぞお楽しみください♪
●Text & Photo/ Shoko Nagano


<第5回> ブロードウェー・ミュージカル “Motown The Musical”
        (2014.6.4)

 
アメリカ音楽史に燦然とその名を残す、“モータウン・レコード”。モーター・タウン(自動車産業の町)、デトロイト発祥であるところからこの名がつき、1960年代には数々のR&Bやソウルミュージックの大ヒット曲と共に、ダイアナ・ロスらのビッグスターを世に送り出した。アメリカでは今なお、モータウンナンバーの人気は衰えることを知らない。それほど“黒人音楽”はアメリカの当時の社会情勢とも相まって、深く深く人々の心に入り込んでいるのだ。このモータウンを立ち上げたのが、黒人の音楽プロデューサー、Berry Gordy(ベリー・ゴーディ)。1959年のことだ。

 『Motown The Musical』は、そのベリー・コーディを主人公に彼がモータウンを立ち上げてから25周年を迎えるまでを綴った自叙伝型ミュージカル。4月22日の上演前からその評判はうなぎ上りでチケットは即売り切れ、案の定あまりの反響からたちまち8月9日まで上演が延期されたほどだ。
   

(左)Clifton Oliver as Berry Gordy
MOTOWN THE MUSICAL First National Tour
(C) Joan Marcus, 2014

(右)The Temptations
MOTOWN THE MUSICAL First National Tour
(c) Joan Marcus, 2014

 さて、先日満を持してこの『Motown The Musical』を観に行った。 ミュージカルを観に行く一番の楽しみは、劇場の扉を開けた瞬間からその世界にどっぷりと浸れることだ。1926年に建てられた歴史的建造物「オリエンタル劇場」は、中東や東洋など未知の世界へ想いを寄せてデザインされた劇場で、シカゴでも観光名所の一つ。ロビーには様々なモザイクや彫刻、像に見立てた籐椅子、神秘的な釈迦像などの装飾がちりばめられ、文字通りオリエンタルムードが漂う。(※詳しくはこちらをご覧ください) ロビーにはスタンドバーが何か所か設置されていて、開演前のひと時やインターミッションで軽くいっぱい飲むこともできる。           
(写真提供:Nacomi Tanaka)

 観客の年齢層は、見たところ50歳以上がほとんど。白人層と黒人層の比率はほぼ同じくらいだろうか。人種差別がまだ当たり前にまかり通っていたモータウン全盛期に、同じ“青春時代”を過ごした彼らが熱狂した共通の音楽。50年の時を経て今、皆が同じ劇場で同じ青春のフラッシュバックを味わっている。このミュージカルはアメリカの歴史であるとともに、彼らの自分史そのものなのだ。ケネディー大統領やキング牧師の暗殺など、アメリカ社会を揺るがした出来事にモータウンの音楽がいかに影響を受けつつ生み出されていったのかがストーリの中に散りばめられ、観客は音楽もろともその時代の記憶の中にすっぽりと入り込んでいるかのようだった。

 何より、一世を風靡した実在(存命含む)の人物が次々に登場して50曲を超えるヒットメドレーを歌い踊る豪華絢爛さが、ミュージカルを観ている気分を一層高めてくれる。ダイアナ・ロス(シュープリームス)、スモーキー・ロビンソン(ミラクルズ)、テンプテーションズ、フォー・トップス、マイケル・ジャクソン(ジャクソン・ファイブ)、マーヴィン・ゲイ、スティービー・ワンダー・・・などなど、これほどのスターたちが勢ぞろいしていたモータウンの全盛期はいかばかりだったろう、と嫌がおうにも思い知らされる。

客席が一番盛り上がるのは、やはりマイケル(子供時代)の登場シーン。Reed L Shannonの声も若き日のマイケルにそっくり。少々ぽっちゃり体系なのはご愛嬌。
Reed L Shannon as Michael Jackson (center) with the Jackson 5
MOTOWN THE MUSICAL First National Tour (c) Joan Marcus, 2014


 劇中、ダイアナ・ロス(役)が客席に降りて、「(“Reach Out and Touch”の一節を)どなたか歌ってくれる方はいないかしら?」と問いかけるシーンがあるのだが、すかさずあちらこちらから手が挙がるところがいかにもアメリカらしい。選ばれた男女はいずれも、度胸もさることながら堂々たる歌唱を披露し、場内から大きな歓声と拍手が贈られた。


MOTOWN THE MUSICAL First National Tour
(c) Joan Marcus, 2014
シュープリームスを演じる、左からKrisha Marcano(Florence Ballard)、Allison Semmes( Diana Ross)、Trisha Jeffrey(Mary Wilson)

 このダイアナ・ロスを演じた地元シカゴ出身のアリソン・セメスの美しさ、歌唱力は特筆もの。かつてダイアナと夫婦でもあったベリー・ゴーディ本人から選ばれたというだけあって、そのしぐさや佇まいまでダイアナそっくりなのだ。
 「(この役が決まって)ダイアナの自叙伝を読み、彼女の映画を見てしゃべり方や身振りなど、すべてを研究したわ。私の生活にはいつもダイアナがいたの」地元CBSのインタビューで彼女はこう語っている。6歳のころからシカゴ・チルドレン・クワイヤーで歌っていた彼女は、幼いころから歌うことが天職だと思っていたという。「この役で音楽のスタート地点であるシカゴに戻ってくることができて、感動で胸がいっぱいよ。」
 アリソンがダイアナを演じていた同じ4月30日、道を隔てた「シカゴシアター」でダイアナ・ロス本人のショウが行われるという偶然も重なり、「最高にクレイジーな気分」(アリソン)。

 休憩をはさんであっという間の3時間。あまりにも内容がてんこ盛り、という批判も一部ではあるものの、やはりアメリカ的エンターテイメントとしての満足感は高い。モータウン音楽をオンタイムで経験した人も、まだ生まれていなかった人も、時代を超越した音楽の素晴らしさを存分に楽しめる。シカゴを訪れる方にはぜひ見てほしいミュージカルだ。8月9日まで。




■ 「Motown The Musical」オフィシャルホームページ 
  http://www.motownthemusical.com/#home-page



■ オリエンタル・シアター (Ford Oriental Theatre)
   24 W. Randolph, Chicago 60601

  http://broadwayinchicago.com/theatre/chicagos-oriental-theatre/




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