シカゴ音楽三昧記
ジャズ、ブルース、ロック、R&B、クラシック、ミュージカル、オペラ・・・シカゴはさまざまな音楽の宝庫。この新連載では、音楽なしでは生きていけない編集長自らが日々体験したシカゴでの音楽ライブを、逐次レポートしていきます。どうぞお楽しみください♪
●Text & Photo/ Shoko Nagano


<第4回> Eddy “The Chief”Clearwater 79歳誕生日祝賀ライブ(2014.1.10)


シカゴブルース界に「引退」の文字はあらず
 
日本では昨年末、サブちゃんが77歳にして『紅白』を引退したが、ここシカゴには“引退”の文字などない。なにしろ、シカゴのブルースシーンで今一番元気なのは70歳以上のブルースマンたちなのだから。
 サブちゃんと同じ77歳のバディ・ガイはますます肌も声も艶が増し、毎年1月の毎週末には自らの経営する店「Buddy Guy’s Legends」でステージのトリをつとめている。昨年11月に85歳を迎えたギタリスト&シンガーのジミー・ジョンソンの張りのある高音は、今なお他の追随を許さない。ギタリストのロニー・ブルックスも、昨年12月に息子たち(ロニー・ベイカー・ブルックス、ウェイン・ベイカー・ブルックス)と共にど派手な「80歳ライブ」を祝ったばかりだ。その他、ビリー・ボーイ・アーノルド(78歳)、ジェームス・コットン(78歳)、エディー・ショウ(77歳)、ボブ・ストロジャー(74歳)、オーティス・クレイ(71歳)、リンジー・アレキサンダー(71歳)、ジミー・バーンズ(70歳)・・・と老いてますますお盛んなブルースマンは枚挙にいとまがない。いや、「老い」などという言葉は誠にもって失礼千万、彼らは今まさに第二絶頂期のごとく輝いているのだ。
 

        
        ジミー・ジョンソン・85歳(左)とジェームス・コットン・78歳 (2013年“シカゴ・ブルース・フェスティバル”より)


人呼んで、“ザ・チーフ(酋長)”
 そしてここにもうおひと方、年々色っぽさを増していくブルースマンが79歳の誕生日を迎えた。Eddy “The Chief” Clearwater(エディ“ザ・チーフ”クリアウォーター)、人呼んで“チーフ(酋長)”。ミシシッピの生んだ最後の偉大な現役ブルースマンのひとりだ。まずは彼の略歴をご紹介しておこう。

 本名、エドワード・ハリントン(Edward Harrington )。1935年1月10日、ミシシッピ州メイコン生まれ。ブルース、ゴスペル、カントリー&ウェスタンなど様々なジャンルの音楽とともに幼少期を過ごしつつ、11歳のころ叔父の影響でギターに目覚め独学で弾き始める。叔父の開いたカフェのジュークボックスから流れるルイ・ジョーダンらの音楽をむさぼるように聞き、「一生、音楽でやっていくと心に決めた」(本人談)のもこの頃だという。
2013年1月、78歳の誕生ライブで(『SPACE』)

 1948年、13歳で家族とともにアラバマに移ったが、その2年後、音楽で身を立てるため、シカゴに移住していた叔父をたよってシカゴへ。マジック・サムやオーティス・ラッシュなどのブルースミュージシャンたちと交流を深めつつ、ブルースの世界へどっぷりと入り込んでいく。  
 50年代前半は、“ギター・エディー”の名で主にサウスやウェストサイドのバーなどで定期的にギグをこなしていたが、57年に聴いたチャック・ベリーに衝撃を受け、ブルースにロックンロールやロカビリーなどの要素を取り入れたエネルギッシュな独自のスタイルを確立。“クリアウォーター”のステージ名がついたのもその頃で、彼のマネージャーでもあったドラマーのジャンプ・ジャクソンが、あの“マディー・ウォーターズ”の名をもじって冗談交じりに命名したという。
 ちなみに、“ザ・チーフ”のニックネームは、彼の母方の祖母がアメリカン・インディアン(ネイティブアメリカン)の血筋であったことと、彼が好んで酋長のヘッドドレス(帽子)を身に纏っていたことからつけられたもの。
 2003年に発表した『Rock 'N' Roll City』でグラミー賞にノミネート、また2008年に発表した『WEST SIDE STRUT』は、ブルース、ロカビリー、カントリー、ロックンロール、ゴスペルがミックスした、彼自身のキャリアが集大成された代表作として高く評価されている。
 

 その“チーフ”の毎年恒例バースデーセレブレーション&ライブレコーディングが1月10日、シカゴ北部エヴァンストンのライブハウス『SPACE』で盛大に開かれた。この日のチケットは早々に完売。毎年このライブを年明けイベントとして楽しみにしているファンや、一緒にこの日を祝おうと訪れたシカゴのブルースミュージシャンたちで埋め尽くされた会場は、開演1時間以上前からすでに熱気にあふれていた。
 バンドメンバーによるオープニングアクトに続いて、いよいよチーフの登場だ。ネイティブアメリカンの太鼓のリズムにのったオープニング曲『They Call Me The Chief』とともに、ヘッドドレスをまとったチーフがスポットライトの中を花道よろしくステージまでを練り歩くと、会場がどっと湧く。こういう例えもなんだが、この人を見るたびに何故か“杉良太郎”が頭の中でだぶってしまう。得も言われぬ存在感を放ち、その場がたちまち色気に満ちたオーラに包まれるのだ。楽屋でくつろいでいるときや普段の彼は、普通のやさしいおじいちゃんなのに、いざ衣装を着てヘッドドレスを身にまとった瞬間、たちまちにしてスターに早変わりしてしまう。花のあるスターというのはまさにこういう人のことを言うのだろう。
 また、そのスタミナにも驚く。「こっちがストップをかけるまで一晩中でも演ってるわよ、きっと」といつもチーフをそばで見守るリネー夫人も笑う。「この人は、本当にステージが好きで好きでたまらないのよ」。
 その言葉通り、ファーストセットが終了したのは時間を大幅にすぎてロニー・ベイカー・ブルックスがストップサインを送ってからだった。歌うほどにエネルギーが増し、ロカビリーチックな独特の動きも冴えわたる。少し気が早いが、来年はどんな“80歳ライブ”を見せてくれるのか、今から楽しみだ。




最新アルバムをプロデュースしたロニー・ベイカー・ブルックス(右)も友情出演
   
 
子供のころから変わらぬ、左利きのアップサイドダウン(右利きギターを弦の張替えなしにひっくり返して使う)スタイル

  
 セカンドステージでは、恒例のバースデーケーキがステージに運ばれ、全員でバースデーソングをなごやかに合唱。シカゴを代表するハーモニカ・プレーヤーのひとりで、チーフのアルバム『West Side Strut』にも特別参加しているビリー・ブランチも飛び入り参加して、ステージに花を添えた。














バンドメンバーとしてギター、ハーモニカ、ベースを担当している日本人ミジュージシャン、Shoji Naito(中央)。左はギターのTom Crivellone
 



        
シカゴを代表するピアニストのひとり
ジョニー・イグアナがゲスト出演

後列左から) Shoji Naito、Stephen Bass、Johny Igana、Tom Crivellone、
Billy Branch、Dave Knopf

 なお、この日の様子はライブレコーディングされ、今年中にCD発売が予定されている。


■ Eddy Clearwater Band @SPACE set list
<1st Set>
1. EC Band Opening Tune
2. They Call Me the Chief
3. Hypnotized
4. Too Old to Get Married
5. Came UP The Hard Way ? Root To The Fruit
6. Cool Blues Walk
7. Good Times are Coming
8. Please Accept My Love
9. Lonesome Town
10. Find You a Job
11. Party at My Backyard
12. Guitar Boogie Jam

<2nd Set>
1. Common Sense
2. A Good Leavin' Alone
3. Gotta Move On
4. Soul Funky
5. Midnight Groove


■ Eddy Clearwater ホームページ
http://www.eddyclearwater.com/

■ “SPACE”
シカゴ北部エヴァンストンにあるレストラン兼ライブハウス。
ほぼ毎日、さまざまなジャンルの一流どころのライブが聴ける。レストラン&Barの雰囲気も良く、自家製窯で焼くピザは絶品。
1245 Chicago Avenue
Evanston, IL 60202
Tel:847-492-8860
http://evanstonspace.com/


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