アメリカ縦断。グレート・ミシシッピを行く

   ●Vol.2 自然に寄り添う街。Minneapolis(ミネアポリス、ミネソタ州)

●Text & Photo/ Shoko Nagano

 
ミネアポリスはシカゴに似ている。
 誰もが知っているアメリカの大都市でありながら、本当の魅力は実のところあまり知られていない。日本からは乗り継ぎだけに使われることも多い。損をしている都市のひとつだ。
 かく言う私とて、ずっとミネアポリスにあこがれを抱いていた理由は“プリンス”だった。“ミネアポリス・サウンド”という新しいジャンルを生み出した音楽の都。映画『パープル・レイン』で見た、ちょっと煙ったようなアメリカの古い工業地帯。さまざまな人種が混在している、危険なにおい漂う町・・しかし、そんなイメージは実際に町を歩くうちにほどなく崩れていった。
 「アメリカで最も安心感のある街」(2013年ギャロップ調査)、「クオリティライフのある街」(2010年フォーチュン誌)、「全米の歩きやすい街10都市」に選ばれたこの街には、とてもリラックスした古き良きアメリカの雰囲気が漂っていた。

 ミシシッピ川4000キロの流れの最初の近代都市として栄えたミネソタ州最大の都市、ミネアポリス。「ミネ」はネイティブアメリカンの言葉で「水の」、「ポリス」はギリシア語で「都市」を意味するその名の通り、湖や川が多数存在する水の都だ。19世紀中ごろには、ミシシッピ川を利用したカナダからの木材輸送や製材業、小麦輸送と水力を利用した製粉業で栄え、“全米の穀物倉庫”、“Mill City”(製粉の街)とも呼ばれた。今でもその当時の小麦倉庫が、時が止まったかのようにその姿を残している。
      
        

 歩いて渡れた源流のせせらぎとは全く違った表情を見せるミシシッピ川に、アメリカの来し方をしみじみと感じつつ河畔を歩く。大都会の中とは思えないほど空気が美しい。新しいビル群と古い倉庫群が違和感なく共存し、そこに緑豊かな公園が点在している様は、自然が街を抱擁しているかのようだ。
 また、自転車人口が多いのにも気づく。サイクリングコースを併せ持つ遊歩道が市内一円の公園を結ぶ独特のパークシステムや、一定料金で乗り回すことができる公共バイクレンタルシステム(ミネソタ・ナイスライド)のおかげで、ミネアポリスは旅行者たちから「最も自転車愛好者に優しい街」に選ばれているほどだ。
 
その昔、大陸横断列車が通ったストーンアーチ・ブリッジ。今は歩行者・自転車専用道になっている。

 かつての製粉工場は、火災・爆発を経たあともそのままの姿を残して現在は博物館(ミルシティ博物館)に再利用されており、当時の繁栄の様子やアメリカを代表する食品メーカー「ジェネラルミルズ」の歴史などを見ることができる。
 その横には、2006年オープンのダイナミックな「ガスリー劇場」がミシシッピ川に突き出すようにそびえ建つ。東京汐留の電通本社ビルなどを手がけた世界的なフランス人建築家、ジャン・ヌーベルの設計による、演劇界でも権威のあるシアターだ。

 ここでは新しい発想のオペラやミュージカルなどが毎日のように上映されており、市民に親しまれている。ユニークなのは、この劇場で上演する演目の小道具や衣装はすべてこの中で手作りされているということだ。靴職人、帽子職人などその道のプロが存在し、このシアターを職場として日夜仕事をしており、文字通りの“地産地消”。また、終演後不要になった衣装や靴などはバザーに出されたり、アマチュアの劇団に貸し出されたりしているという。
ガスリーシアター
 シアター内には自由に入ることができるので、外部に突き出したガラス張りの回廊「エンドレス・ブリッジ」からミシシッピを見下ろしながらゆっくりとランチを食べたり、本を読んで日がな一日過ごしたりする人も多い。また、舞台裏をたっぷりと見学できる「バックステージ・ツアー」は毎日午前10時から行われていて、こちらも大人気だ。(有料)。
 ミネアポリスは、このガスリー劇場ほか30以上の劇場と100以上の劇団を有し、ニューヨーク、シカゴに次ぐシアター天国だ。

ガスリーシアター内のセピア色のガラスを通すと外の景色もこのようにレトロに見える。

 ミネアポリスはまた、「アートシティ」、「デザインシティ」とも評価されるアート&カルチャーの宝庫でもある。都市型彫刻庭園として全米一の規模を誇る「ミネアポリス彫刻庭園」(Sculpture Garden)、それに隣接した現代美術館「ウォーカー・アート・センター」は特に人気で、市内から徒歩でも訪れることができる。さらに人気建築デザイナー、マイケル・グレイブス設計による「ミネアポリス美術館」では、ローマ時代から20世紀までの様々な美術を鑑賞することができる。

 ミネアポリス名物、彫刻庭園内にある「チェリー・オン・ザ・スプーン」。

 市内を歩きながら気づいたのは、歩行者が少ないこと。その理由は、“スカイウェイ”と呼ばれるビルの2階同士を結ぶガラス張りの高架歩道の存在。ミネアポリスのスカイウェイは17℃前後に温度調節されていて、ダウンタウンの83ブロック、全長約11キロにわたりビル群をつないでいる。
 このスカイウェイ・システムを利用すれば、ミネソタの厳しい冬の寒さや雪を気にすることなく、ショッピングを楽しんだりレストランを巡ったり、一味違った街の観光が楽しめるのだ。
 
 ミシシッピの流れとともにその恩恵を受けて街としての進化を刻んできた、アメリカのハートランド、ミネアポリス。実際に足を運んでみて想像以上に魅力的な街だった。建築、アート、演劇、音楽、メジャーリーグなどのプロスポーツ、緑多き公園、水辺の散策路・・・とすべてにおいてトップレベルのものがコンパクトな町にまとまっているところなどは、まさにシカゴと似ていた。




  (つづく) ・・・・・・・次なる目的地は、Red Wing(レッドウィング)〜Wabasha(ワバッシュ) 



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 ●買い物天国 「モール・オブ・アメリカ」(Bloomington)

4大有名デパート、520点の専門店、レストラン、ホテル、映画館、水族館、そして屋内遊園地まで有する、アメリカ最大級のショッピングモール。ミネソタ州は洋服と靴に税金がかからないのが魅力。
【交通】ミネアポリスと空港、モール・オブ・アメリカをライトレール(路面電車)が結び経済的で便利な交通手段として利用されている。空港からは約10分。ミネアポリスからは約半時間の乗車。ほとんどのホテルがモール・オブ・アメリカとホテル間の無料シャトルサービスを提供している。
Web:www.mallofamerica.com


【ミネアポリス 情報】

モダン建築家5人の競演は必見!
ウォーカーアート・センター
東京のプラダ青山店、ロンドンにあるテイト・モダン美術館、ドイツ・ワールドカップ競技場(アリアンツ・アリーナ)などのデザインを手がけ、北京オリンピックのメイン・スタジアムを設計する、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞受賞のスイス人建築家ヘルツォーク&ド・ムーロンの作。全米有数のコンテンポラリー美術館として2005年4月17日グランド・オープニング。人気シェフ、ウルフガング・パックのレストランがミュージアムカフェとして登場。

ガスリー・シアター (Guthrie Theater)
ミシシッピ河畔に製粉業の繁栄の歴史をイメージした斬新なデザインの新館を2006年6月にオープンした演劇界の権威あるシアター。日本でも東京汐留の電通本社ビルなどを手がけ、2001年には高松宮殿下記念世界文化賞建築部門での受賞、パリ・カルティエ財団、ライオン・オペラハウスなどで有名なフランス人建築家、ジャン・ヌーベルの設計。ミシシッピ河を展望するガラス張りの設計とネオンや俳優たちの巨大なポートレートなど、ユニークなデザインがインダストリアルな外観と調和した建物。

ミネアポリス・チルドレンズシアター (Children's Theater)
人気建築デザイナー、マイケル・グレイブスを起用し、新たに拡張が進められ、2006年春に完成。劇場以外に、青少年の育成を促進するクラスルームや実験舞台なども設けられた革新的なシアター。シアター・グループは全米でも数少ない青少年向け劇場として、2003年にトニー賞を受賞。

ミネアポリス美術館 (Minneapolis Art Institute)
期せずして隣接するチルドレンズシアターと同じ人気建築&インテリア雑貨デザイナー、マイケル・グレイブスによる建築で2006年6月に別館がオープン。ニューヨークのホイットニー美術館や日本ではNTTデータ通信本社ビルの内装や、北九州市の複合商業施設「リバーウォーク北九州」における西日本工業大学デザイン学部キャンパスも手がけた彼は、日本ではアレッシーのお洒落なケトルなどでも人気がある。アメリカ建築家協会(AIA)ゴールドメダル受賞。別館オープンによってライブラリーやギャラリーが拡張され、全米でも有数の美術館として充実したコレクションを収蔵する。

ワイズマン美術館 (Weisman Art Museum)
ミネソタ大学の一部として建設され、グッゲンハイム美術館ビルバオでも有名なフランク・ゲーリーの実験的デザインの最初のモデルとして注目を集めた建物。ティファニーの新しいジュエリーのデザインやインテリアにも進出する彼の設計作品は、ニューヨークのトライベッカ・イッセイミヤケのフラッグショップ、ロサンゼルスのディズニー・コンサートホール他、日本でも神戸メリケン・パークの「フィッシュ・ダンスホール」レストランの巨大なオブジェに見る事ができる。

ミネアポリス公立図書館中央支所 (Minneapolis Public Library's Central branch)
新図書館ビルを市街中心に建築中。2006年春にオープンしたガラス張りのライブラリーは、スペイン人建築家シーザー・ペリによるデザインで、図書館としてだけではなくコミュニティセンターとして、新たに生まれかわった。東京のアメリカ大使館、ニューヨークのカーネギーホール・タワーの設計を手がけ、また、大阪中之島に建築予定の国立現代美術館のデザインも担当する。

メジャーリーグ 「ミネソタ・ツインズ」と、環境に優しいホーム球場
地元「ミネソタ・ツインズ」は常に地区優勝候補の手堅いチーム。ヤンキースなど人気チームとの対戦もあるホームゲームは、LEED(※)認定評価を受ける新球場「ターゲット・フィールド」で行われる。
※LEED:Leadership in Energy and Environmental Designの略。
http://minnesota.twins.mlb.com

●レストラン
「FireLake Restaurant」
ミネソタで採れた食材を使ったグリル料理がおいしいオーガニックレストラン。
31 S 7th Street, Minneapolis
612-216-3473
www.firelakerestaurant.com/plaza.php

ミュージック・エンターテイメント
「ダコタ・ジャズクラブ・レストラン」
ミネアポリスを代表するジャズクラブで、有名ジャズミュージシャンもお気に入りの場所。気軽に誰でも楽しめる雰囲気とグルメメニューが人気。
1010 Nicollet Mall, Minneapolis, MN 55403
612-332-1010
www.dakotacooks.com

「ファースト・アベニュー」
“ミネアポリス・サウンド”が息づく、Pop& Rockの有名クラブ
701 1st Ave N, Minneapolis, MN 55403
612-338-8388
http://first-avenue.com/


その他、ミネアポリスに関する情報は以下をご覧ください。

日本語 :http://japanese.minneapolis.org/
英語   :http://www.minneapolis.org/



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